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自分の死後、300万円でペットの世話を委託する時代

高齢者の孤独死で残されるペットの運命は

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第101回】 2015年1月17日
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 ご存じの方も多いと思うが、『ボンダイビーチ動物病院』という、オーストラリアのテレビ局が製作しているドキュメント番組がある。

 ボンダイビーチというのはシドニー東南にある絶景の海岸のことで、そこにある動物病院の物語だ。主人公はクリス・ブラウンというベテラン獣医師で、言うなれば『動物のお医者さん』なのだが、これがまた泣かせる番組なのである。

 たとえば――、交通事故に遭い、動物病院には瀕死の犬が運び込まれるエピソードが紹介される。タイヤに巻き込まれた犬は両手脚を骨折し、片方の眼球は半分飛び出ている。他にも多数骨折していると見られる状態で、はっきり言って悲惨だ。

 でも、彼らは懸命の手当を施し、何とかその犬を助けようと処置を続ける。大丈夫だ、怖がらないで、そう、いい子だ、私が必ず治してあげるから等々、動物たちに話しかける獣医師は慈愛に満ちていて、ちょっと素敵だ。

 連絡を受けた飼い主が病院に到着し、ケージに入れられた飼い犬に声をかけると、それまでぐったりしていた犬はむくりと顔をあげ、飼い主のもとまで這って行こうとする。両脚を骨折しているから這おうとしても這えないのに、必死に飼い主のもとに近寄ろうとする。

 飼い主は犬の頭を撫でてやり、よしよし、よく頑張ったなと褒めてやる。すると、気持ちが通じたのか、犬は甘えるようにクゥーンと啼くのだが、その健気な姿に私などはもうウルウルしてしまうのだ。

 その後の検査で、脊椎の損傷が判明する。レントゲン写真で骨折を確認した獣医師は頭を抱え、絶望的に首を振る。この犬はもう長く生きられないことがわかったらしい。そして、これ以上苦しまないように、安楽死させてやるのがいちばんだと飼い主に告げる。

 飼い主には苦渋の切断が迫られ、長い嘆きのあと、ペットとの別れの場面が映し出されるのだが、ここまで来ると見ている私はもう号泣だ。ソファーにもたれて見ていたのに、いつの間にか私は身を乗り出していて、気づけば足元にぼたぼたと涙がこぼれていたりする。

 このドラマは本当にそういう場面がちりばめられているのだ。台本があるわけでもないのに、これからお前が行く天国はボンダイビーチのような美しいところで、お前は好きなだけ駆けまわることができるんだぞ――、みたいな台詞が出てくるのだもの。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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