ご存じの方も多いと思うが、『ボンダイビーチ動物病院』という、オーストラリアのテレビ局が製作しているドキュメント番組がある。

 ボンダイビーチというのはシドニー東南にある絶景の海岸のことで、そこにある動物病院の物語だ。主人公はクリス・ブラウンというベテラン獣医師で、言うなれば『動物のお医者さん』なのだが、これがまた泣かせる番組なのである。

 たとえば――、交通事故に遭い、動物病院には瀕死の犬が運び込まれるエピソードが紹介される。タイヤに巻き込まれた犬は両手脚を骨折し、片方の眼球は半分飛び出ている。他にも多数骨折していると見られる状態で、はっきり言って悲惨だ。

 でも、彼らは懸命の手当を施し、何とかその犬を助けようと処置を続ける。大丈夫だ、怖がらないで、そう、いい子だ、私が必ず治してあげるから等々、動物たちに話しかける獣医師は慈愛に満ちていて、ちょっと素敵だ。

 連絡を受けた飼い主が病院に到着し、ケージに入れられた飼い犬に声をかけると、それまでぐったりしていた犬はむくりと顔をあげ、飼い主のもとまで這って行こうとする。両脚を骨折しているから這おうとしても這えないのに、必死に飼い主のもとに近寄ろうとする。

 飼い主は犬の頭を撫でてやり、よしよし、よく頑張ったなと褒めてやる。すると、気持ちが通じたのか、犬は甘えるようにクゥーンと啼くのだが、その健気な姿に私などはもうウルウルしてしまうのだ。

 その後の検査で、脊椎の損傷が判明する。レントゲン写真で骨折を確認した獣医師は頭を抱え、絶望的に首を振る。この犬はもう長く生きられないことがわかったらしい。そして、これ以上苦しまないように、安楽死させてやるのがいちばんだと飼い主に告げる。

 飼い主には苦渋の切断が迫られ、長い嘆きのあと、ペットとの別れの場面が映し出されるのだが、ここまで来ると見ている私はもう号泣だ。ソファーにもたれて見ていたのに、いつの間にか私は身を乗り出していて、気づけば足元にぼたぼたと涙がこぼれていたりする。

 このドラマは本当にそういう場面がちりばめられているのだ。台本があるわけでもないのに、これからお前が行く天国はボンダイビーチのような美しいところで、お前は好きなだけ駆けまわることができるんだぞ――、みたいな台詞が出てくるのだもの。