クルマとITの勝負は「自動運転」にあらずVW「ゴルフ R Touch」の世界発表直後。世界各国のメディアの注目が集まった Photo by Kenji Momota

 例年通り、“取材始め”はこちらCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー/2015年1月6~9日、於:米ネバダ州ラスベガス)となった。

 報道陣向けの事前公開日を含めた5日間、筆者はラスベガスでクルマとITとの融合、つまり次世代テレマティクスの最新情報を探った。

 期間中、日米の自動車及びIT業界関係者らと会食中に意見交換するなかで、今回のトレンドについて、筆者は次の3点を強調した。

(1)nVIDIAとアウディ、過去5年間に及ぶ
マーケティング戦略が、ついに花開いた。

クルマとITの勝負は「自動運転」にあらず車載向けの基盤のプラットフォーム「CX」を世界初公開するnVIDIAのJen Hsun Huang CEO Photo by Kenji Momota

 従来、自動車産業界において半導体メーカーはティア2(第二次部品メーカー)の存在。車載器やECUを扱うティア1(第一次部品メーカー)との開発が主体で、自動車メーカーと直接的なつながりが弱かった。それが、グラフィックス向けを主力として特化型GPUを製造するnVIDIAと高級ブランドであるアウディが、中長期的な視野に基づいて、CESを活用したマーケティング戦略を進めてきた。

クルマとITの勝負は「自動運転」にあらずアウディの屋外展示。独ホッケンハイムサーキットで最高時速240㎞で自動走行した実験車などを披露 Photo by Kenji Momota

 2社のつながりは、スタンフォード大学の内部機関で進めている自動運転研究等をキッカケとして、過去10年以上に渡って続いてきた。筆者は同大学にも数度取材しており、その詳細について認識している。陰の存在である半導体が広報活動の一環としてここまで表に出てくることで、アウディの次世代テレマティクス全般における“先進的イメージ”が上手に構築されてきた、と言える。

クルマとITの勝負は「自動運転」にあらずnVIDIAのカメラを使ったディープラーニングの実証試験映像 Photo by Kenji Momota

 またnVIDIAの個別会見では、自動運転の基礎的な技術開発領域であるADAS(アドバンスド・ドライバー・アシスト・システム)で、カメラ映像のディープラーニングだけによる走行状況の解析を行なっていることを強調した。こうした近未来型の自動運転関連技術について、インテル、クアルコム、ルネサス等、半導体の同業他社からは一般に向けた広報活動は行われていない。