疑惑の「中東の笛」に端を発したハンドボールのオリンピック・アジア予選再試合、日本対韓国戦は男女とも韓国の勝利で幕を閉じた。

 残念な結果に終わったとはいえ収穫もあった。一連の騒動のおかげで競技に対する注目度は急上昇。NHK・BSで試合が生中継されたばかりか民放各局のスポーツニュースも結果をトップで報道した。ハンドボールがこれほど注目を集めたことはなく、日本ハンドボール界としては競技の魅力をアピールする絶好の機会を得た。

 一躍知名度が上がった日本ハンドボール界だが、再予選の実施に伴い、最予選を管理した国際ハンドボール連盟(IHF)に対し、「協賛金」と「放映権収入」の約7割を支払わなければいけないという誤算も生じている。開催費も予想以上に膨らんだといわれ、結果的に再予選は赤字になる可能性もあるという。オリンピックへの切符を逃した上に、赤字というダブルパンチを受けた格好だ。

なぜアジアハンドボール連盟は
強気に出られるのか?

 日本ハンドボール界の受難はこれだけではない。昨年9月のアジア予選を無効にされたアジアハンドボール連盟(AHF)の反撃が止まらないのだ。再予選に参加した日本と韓国を資格停止処分とするとともに、予選のやり直しを決定した国際ハンドボール連盟(IHF)をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する動きを見せている。

 また、AHFのシェイク・アーマド会長はアジアオリンピック評議会(OCA)の会長も兼務しており、2016年オリンピックの東京招致活動に対する抵抗勢力になるのは確実。しかもこの人物は政治力を持つクウェートの王族だ。スポーツ以外でも中東―日韓間の摩擦の種をまくことだって考えられる。やっかいな騒動に巻き込まれたともいえるのだ。

 ところで今回の騒動で多くの人が疑問に思ったのは、「なぜAHFがここまで強気に出られるのか」ということだろう。世界のハンドボールを統括するのは国際ハンドボール連盟(IHF)だ。アジア地区の統括組織であるAHFはその傘下にあり、不満があったとしてもIHFの決定には従うのが筋である。にもかかわらずタテついた。苦労知らずの王族のわがままと片づけることもできるが、強気になれる理由があるはずなのだ。

 それを推理するには競技団体の存在理由と構造を知っておく必要がある。

国際競技団体とは?
その存在理由と構造

 国際的に普及している競技には、それを統括する国際競技団体がある。統一したルール作りや世界選手権などの大会の主催・運営を行い競技の世界的普及に努める組織だ。その傘下には大陸内を統括する競技団体があり、各国の競技団体がある。各国の競技団体は国内選手の登録や大会運営などを行う。頂点には国際競技団体、裾野には初心者を含めた世界中の競技者がいる。こうした巨大なピラミッドが競技ごとに形成されているのである。