日本企業が最大化できていない
クラウドの本来の価値

 こんにちは。今回は、ここ10年弱で普及してきた「クラウド」について考えます。経営やビジネスの視点から基本に立ち返って、その本来の価値と、日本企業の課題について書いてみたいと思います。

 米国におけるクラウドのビジネス利用は、米フォーブスWeb版の2014年1月のレポートによると、2014年で約1兆3000億円規模に上るそうです。米国のWebサイト、シリコンアングル(SiliconANGLE)によると、クラウド市場は今後5年で44%成長するのに対し、自社保有のコンピュータ(オンプレミスと言います)は8.9%に留まるとしています。また、82%の企業が、クラウドによって費用の削減が行えたと回答しています。

 少し古いですが、クラウド普及の日米比較に関して、総務省が公開している報告によると、クラウドを活用していると答えている企業は、2010年で日本26.1%に対して米国は64%と2.5倍の差がありました。その前年の2009年では、日本14.8%、米国56.2%と3.8倍であったことからすると、差は縮まってきています。

 しかしながら、米国の利用も上記のように加速していることから、日本の本格的な活用はまだまだ少ないと言えます。この差はなぜなのか?

 総務省の上記の報告書によると、情報系システム(データ分析など)のクラウドの利用については、日米ともほぼ同じですが、基幹系(会計システム、受発注システムなど)は、日本が8.3%なのに対し、米国では27.9%となっています。これが、大きな違いを生んでいるのでは、と報告されています。

 ここでもう一度、すでに手垢がついているのに、実現されていないクラウドの価値について考えてみたいと思います。

クラウドの本質的な価値は
経営体質の改革にある

 クラウドの価値について、世間では「コスト削減・変動費化」「スピード」「管理からの解放」などが語られます。これらはもちろん、正しいとは思います。

「スピード」についてですが、自社で専用のコンピュータを購入し、仕組みを作り上げることは、それなりの時間がかかります。でも、クラウドであれば、すでに設置してある装置の「利用」ですから、論理的には、すぐに利用できることになります。言ってしまえば、電線さえあれば、引っ越してすぐに電気が使えるのと同じです。