2015年は戦後70年の節目でもある。増税再々延期という選択肢を断ったアベノミクスはまさに正念場を迎える。集団的自衛権ではいよいよ関連法の改正が行われ、具体的な姿が浮かび上がってくるはずだ。わが国のエネルギー構成をどうするかも決めなければならない。安倍・習会談で関係改善の糸口をつかんだ日中関係はどうなるのか。世界情勢を見れば、原油価格の暴落が暗い影を投げかけている。

平和でやさしいイメージの未(羊)年とは打って変わって、課題山積。そこで著名な経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。第12回は、立命館大学政策科学部准教授・上久保誠人氏の見通しをお伝えする。

(1)安倍政権はアベノミクスの退潮を防ぐためになりふり構わず行動するが、国民の財政悪化、将来への不安は解消されず、内閣支持率は徐々に低迷する。族議員、財務省・財政再建派政治家に包囲される安倍政権は、徐々に政治的体力を失う。9月の総裁選では、財政再建派から対立候補が浮上する可能性がある。

内閣支持率が低迷、安倍首相は「やりたい政策」を強行<br />――立命館大学政策科学部・上久保誠人准教授 かみくぼ・まさと
立命館大学政策科学部准教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。

 2014年、安倍政権はアベノミクスの退潮を防ぐために、「黒田バズーカ・2」と呼ばれる大規模金融緩和、衆院解散総選挙の断行と、なりふり構わず行動した。今年も、日銀による金融緩和の継続、際限ない公共事業の増発、法人税減税、特定業界への減税措置の乱発、という大規模なバラマキを続けるだろう。株高・円安は継続し、短期的な大企業の高収益は維持される、一方で財政悪化が拡大し、国民の将来への不安が高まっていく。内閣支持率が劇的に上昇することはなく、横ばいか徐々に低迷していくだろう。

 バラマキによる族議員の跋扈によって、アベノミクス第3の矢である「成長戦略」やTPP推進に対する抵抗が強まっていく。徐々に政治的な体力を奪われる安倍政権に対して、財務省と財政再建派の政治家の包囲網が再び敷かれていく。9月の自民党総生産の時点で、安倍内閣の支持率が低迷すれば、谷垣禎一幹事長など財政再建派から対立候補が浮上する可能性がある。