アラブ 2015年1月21日

教えて! 尚子先生
イスラエルと周辺国との関係はどうなっていますか?【中東・イスラム初級講座・第18回】

チュニジア、エジプト、リビアと革命が続く中東。今でも毎日のように、テロや紛争のニュース が絶えません。なぜ中東では革命や政変がこんなに起こるのでしょうか。今回はイスラエルと、国境を接するエジプト、ヨルダン、シリア、レバノンとの関係。さらに、世界の人々がイスラエルをどう評価しているかがわかるユニークな調査を紹介します。

 イスラエルとアラブ諸国との関係は、イスラエル建国の経緯を考慮しても、「良好」な関係とはほど遠く、イスラエルの存在自体を認めていない国がほとんどです。イスラエルと国境を接しているアラブの国はエジプト、ヨルダン、シリア、レバノンの4カ国で、今回はこの4カ国との関係を中心に説明してみたいと思います。

 そして、最後に世界の人々がイスラエルをどのようにみているのかという調査が、イギリスのBBC放送によって行なわれていますので、その調査結果を簡単に紹介してみようと思います。

イスラエルとエジプトとの関係は?

 はじめにイスラエルとの和平を模索したのはエジプトでした。エジプトは第4次中東戦争(1973年:「パレスチナ問題」とはなんですか?<前編>を参照のこと)まで、イスラエルとの戦争にはすべて参戦してきた国であり、アラブ諸国のオピニオン・リーダー的な存在でした。しかし、たびかさなる戦争により、軍事費が国庫を圧迫して経済的には疲弊していました。

 1970年に大統領に就任したサダトは、この状況を改善しようと試みました。前大統領のナセルはイスラエルに対して強硬姿勢をとっており、政策的には社会主義体制を標榜したためにソ連(現在のロシア)寄りで、宗教勢力つまりイスラム勢力を抑え込んでいました。

 サダトはこれを180度転換させ、経済の自由化と親米体制の確立、そしてイスラエルとの和平の実現を模索したのです。これらの実現のために、サダトはあえてイスラエルに戦闘を仕かけ(第4次中東戦争)、戦争に勝利してアメリカの関心を引きつけると同時に、シナイ半島を奪還して有利に和平交渉を進めようともくろみます。この戦争で勝利を収めることはできなかったものの、イスラエルに大打撃を与えることができたとして、サダトは国民からの人気と信頼を勝ち取ることができました。

 この人気を背景に、サダトは戦後、これまでの社会主義路線を撤廃し、冷戦体制のまっただ中であったにもかかわらず、親ソから親米へ、そして経済自由化とイスラム主義の復活へと大きく舵をきったのでした。

 その総仕上げともいえる大事業が、イスラエルとの単独和平でした。サダトは1977年にイスラエルを電撃訪問し、翌78年9月にはアメリカの仲介でベギン・イスラエル首相とキャンプ・デービット協定に合意しました。これにより、エジプトは初めてイスラエルという国の存在を認めたアラブの国となりました。同年、サダトとベギンはノーベル平和賞を受賞しました。79年には正式に中東平和条約を締結し、イスラエルからシナイ半島の返還を約束されたのでした(1982年から返還開始、89年完了)。

 この平和条約にアラブ諸国が激しく反発したのはいうまでもなく、エジプトはアラブ諸国からの支援停止、地域協力機構であるアラブ連盟からの脱退(1989年5月に復帰)を強いられました。

孫と祖父=Dana/ヨルダン【撮影/安田匡範】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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