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元経産官僚・伊藤慎介の“天落”奮闘記

“天落”から転落?起業家を追い詰める
“サラリーマン優遇型”社会保障制度の弊害

伊藤慎介 [株式会社rimOnO(リモノ)代表取締役社長]
【第4回】 2015年1月21日
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 “天落”奮闘記も今回で4回目を迎えることとなった。今回は、“天落”ならぬ転落ではないが、筆者自身の失敗体験を織り交ぜながら、役人から起業家へシフトする上で体験したことをご紹介したいと思う。

二次どころか一次であっけなく落選
政府の起業家支援プログラム

 アベノミクスの第三の矢である成長戦略「日本再興戦略」には、民間の力を最大限に引き出すことを目的に「新陳代謝とベンチャーの加速」が重要政策の一つとして位置づけられており、数々のベンチャー支援策が盛り込まれている。

 その中に、起業家の卵を支援する事業がある。正式名称は「研究開発型ベンチャー支援事業」といい、現在は企業や大学などに属しているが、近いうちに起業することを考えている人材を対象に、起業するための活動費としてチーム当たり年間1500万円(上限)の資金と、起業準備期間の生活資金として一人当たり650万円が支給されるという、破格の支援内容の起業家支援プログラムとなっている。

 公募を行っているNEDOのホームページによると、平成26年度分の公募には420件の応募があり、最終的に14件が採択されたとのことなので、30倍もの高倍率であったことが分かる。

 何を隠そう、実は、筆者もパートナーの根津と共に当事業に応募していた。

 創業時には、安定した収入が入ってくる仕事を辞めた上で、いつまで無収入が続くのかという不安を抱えながら、一方で会社や事業を立ち上げるための先行投資を行うことが必要となる。もちろん、転職活動中の人たちと違って雇用保険制度での失業給付はない。

 つまり、起業を真剣に考えている人たちにとって、毎月50万円近くの安定した収入が保証されたうえで、チーム当たり1500万円までを事業投資に使うことができる当事業は、起業する上でのあらゆる不安を解消してくれる夢のようなプログラムなのだ。

 他の起業家の人たちと同様、資金的不安を解消したかった筆者も、当然のように応募し、「政府の意向を十二分に分かっている元役人なんだし、うまくいけば受かるかも」という、甘い考えを抱きながら一次審査の結果を待った。

 ところが、8月末に知らされた結果は、無残にも二次審査どころか一次審査であっけなく落選というありさまである。

 これにより、9月より筆者は先の見えないトンネルに入らざるを得なくなったのである。

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伊藤慎介 [株式会社rimOnO(リモノ)代表取締役社長]

いとう・しんすけ/株式会社rimOnO(リモノ)代表取締役社長。1973年生まれ。京都大学大学院工学研究科卒業後、1999年に通商産業省(現、経済産業省)に入省。経済産業省では、自動車用蓄電池の技術開発プロジェクト、スマートハウスプロジェクト、スマートコミュニティプロジェクトなどの国家プロジェクトを立ち上げた後、2011~2013年には航空機武器宇宙産業課において航空機産業政策に従事。2014年7月に経済産業省を退官し、超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnOをznug design根津孝太と共に設立。


元経産官僚・伊藤慎介の“天落”奮闘記

経済産業省の官僚としてキャリアを積んできた伊藤慎介氏。しかし、新しいコンセプトの電気自動車を世に出すべく退官。株式会社rimOnOを設立した。官僚として定年まで勤めて政府系団体のポストに就くのが“天下り”だが、伊藤氏は官僚という“天”の地位から“下る”のではなく自ら“落ち”、リスクを背負って起業した。しかし、伊藤氏はそれによって産業政策についての新たな視点を得た。本連載では今の日本に求められるイノベーションとは何なのか、新たな産業の創造には何が必要なのか、官僚を辞めリスクをとって起業し、奮闘したからこそ見えてきた視点・視角をお届けする。

「元経産官僚・伊藤慎介の“天落”奮闘記」

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