個人金融資産の運用と
政府の成長戦略

——個人の金融資産運用についてはいかがですか。また、政府はどんな成長戦略を描いているのでしょうか。

伊藤 個人にも同じことがいえます。日本の個人金融資産は1650兆円を超えるといわれますが、そのポートフォリオは、欧米と比べて預貯金に偏っているのが現状です(下の図参照)。実質金利がマイナスということは、放っておけば大切な金融資産が目減りすることを意味しますから、これからは投資的な視点でどこを厚くしていくのか、ポートフォリオの組み替えを意識していかなければなりません。

 政府の戦略については、「第三の矢」として「消費と投資、輸出、需要を喚起する成長戦略」を打ち出していますが、注目しておきたい動きがすでに起こっています。

 一つ目は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金が投資に振り向けられる比率が増していること。これは今後ますます投資マネーとしての活用拡大が期待されています。

 二つ目はすでに議論が起こっている「法人税改革」。法人税率引き下げが焦点になっていますが、減税分を雇用者の賃金アップにつなげていくことが大事なポイントになると思います。

 三つ目は訪日外国人観光客数の増加です。昨年は約1300万人もが日本を訪れましたが、訪日観光客10人の買い物金額は、日本人1人の年間家計消費金額に匹敵するパワーがあります。

 そして、四つ目は「国家戦略特区」制度の加速です。規制緩和、規制改革などがより進んでいけば、民間の投資を誘発することが可能ですし、地域活性化につながることが期待できます。

 こういった施策をうまく動かすことができれば、消費・投資の増大につなげていけるのではないかとみています。