従業員の不適切な投稿や顧客対応などを引き金にした、企業イメージを毀損しかねない風評被害・誹謗中傷の事案が後を絶たない。ネット社会ではささいな出来事でも一気に拡散、炎上する恐れがある。Webリスクを企業の危機管理の一環として捉え、早期の対策を講じていく必要がある。

 ここ数年、「炎上」と呼ばれるネット上のトラブルがますます深刻化している。企業向けのWebリスクマネジメントを手掛けるエルテスの調査によると、2011年に341件だったものが、13年には477件にまで増え、14年も11月末までで408件の炎上案件が発生しているという。

 炎上の事案が増える一因に、ネット社会の進展がある。写真や動画の撮影が可能なスマホや、Twitter、Facebookといったソーシャルメディア(SNS)が普及し、いつでも、どこでも簡単に情報発信が行えるようになった。だが、落とし穴もある。

中高年ユーザーが
炎上の火元になることも

 最近はSNSやスマホの扱いに不慣れな中高年が不適切な主張や写真をSNSに投稿し、炎上することもある。その一例として、50代男性教師が生徒を正座させた写真をSNSに投稿し、炎上した事案を記憶している人もいるだろう。

 炎上の影響は当の教師だけにとどまらない。生徒の確保が経営課題となる学校にとって、ネットでの炎上はイメージダウンになりかねない。生徒や保護者が受験先を調べて検索する際、炎上問題が表示されれば受験をためらうかもしれない。

 学校に限らず、企業にとってもWebリスク対策は経営課題そのものといえる。

 個人所有のスマホを業務で使うBYOD(Bring Your Own Device)を採用する企業も増えている。これまでスマホ内の業務データなどを保護するセキュリティ対策に重点が置かれてきたが、それに加えて、スマホによる不用意な情報発信、投稿にも留意する必要があるだろう。

 従業員が休憩中に社内の様子を写真に撮り、SNSに投稿したところ、デスク上の機密書類が写っていたというケースもある。本人は意識しなくても、機密情報が漏えいする恐れがある。そこで、企業はWebリスクを含むセキュリティポリシーの見直しや従業員のIT教育徹底が対策の第一歩となるだろう。

 また、他社の炎上に巻き込まれることもある。A社が引き起こした問題に対し、「以前、B社やC社にも同じような問題があった」といった書き込みがネット上の掲示板などで行われ、風評被害の「渦」に巻き込まれるリスクがあるのだ。

 ネット上の風評被害・誹謗中傷を完全に防ぐのは難しいが、自社に関連する書き込みなどの早期発見・早期対応で、炎上する前に対処することはできる。Webリスクにどう向き合うか。経営者の覚悟が問われている。