『中谷彰宏の人生道場』テーマ第2弾は、「企画力」です。企画力と一言でいっても、「本当の企画力とは何か」をわかっている人は多くありません。企画した“つもり”になっている人が非常に多いのです。人に感動を与えたり、人を楽しませたりできる、質の高い企画を生むためには、「1%でもいいからプラスしたい」という強い思い入れが重要。これまで、数えきれないほどの企画を自ら作り、またさまざまな人たちの企画も見てきた経験を持つ中谷彰宏が、「本当の企画力とは何か」を伝授します。


新しいアイデアは、
お客様から出ている。


 景気が悪くなればなるほど、つい短所に目が行きがちです。そこで、「景気が悪いから、もうこの商売はあかん」とやめてしまう人と、そこで踏ん張る人の差がついてくるのです。

 景気がいい時には、長所も、短所も、何が原因で売れているかも、わかりません。景気が悪くなると、短所は当然出てきます。でも、そこに新しいタネが生まれてくるのです。
 
 たとえば、銭湯です。今から銭湯をしようという人は、まずいません。あれだけの場所をとって、あれだけ手間がかかって、1日のお客様はたかだか知れていて、1万円も2万円も料金をとれるものではありません。
 
 バブルの時代に、銭湯がまず地上げのターゲットになって、どんどん減りました。今、家にお風呂がないところはありません。
 
 私は子供の時、商店街で育ちました。商店街はスペースに限りがあります。京都の町でもそうですが、お風呂はありませんでした。だから、銭湯へ誰もが行く、そんな時代でした。
 
 今は閑古鳥が鳴いている銭湯が多いのですが、ある銭湯はとても儲かっています。その銭湯のやったことは、意識の切りかえです。銭湯とは一体何かを考える時、自分の頭で考えていてはいけません。
 
 まじめな人は、一生懸命自分の頭で考えます。ところが、もう少しいいかげんになるのです。

 自分の頭の中で考えるのは面倒くさいと思っていいのです。そうすると、今度はお客様を見るようになります。

 お客様を見ると、必ずヒントがあります。頭のいい人は自分の頭の中で一生懸命考えてしまって、アイデアが出ません。

 「私、頭よくないんです」と思える人、ラクしたいと思える人は、お客様を見ます。近所の家にすべてお風呂があるから、銭湯のお客様がどんどん減ってきました。その時、自分が銭湯を引き継いだ2代目だったら、どうするかです。

 頭のいい人は、スーパー銭湯に変えます。テレビでスーパー銭湯を見て、流行っているらしいと思うのです。「スーパー銭湯にしませんか。お金出しますよ」という人がやって来て、設備投資をします。でも、これは間違った方向です。

 頭の中だけで考えた企画で、お客様を1つも見ていないのです。