会場B 高萩さんに伺いたいのですが、まず問題意識があって市場調査をして製品にたどり着いたという話でしたが、とても信じがたくて、先に製品があったんじゃないかという思いが離れないのですが。

高萩 そういう質問は好きです(笑)。でも、結論からいうと全くノーなんです。ウェアラブルを作るつもりはまったくありませんでした。作っていったら、いつの間にかウェアラブルになってしまって、流行りに乗ったと思われそうでイヤだったぐらいです。

 どういうモノを作るかは決まってなかったので、課題がわかったあと沢山ある解決策のなかから、子どもたちが遊んでいる姿をひたすら観察して、そうしたときにたまたまおもちゃ遊びをしている姿をみて、これを現実拡張してあげたらすごく喜びそうだな、と最初は有線のプロトタイプを作ってみたんです。でもその段階では全然ウェアラブルにはなっていませんでした。

 最後に、もっとセンサー値が固定されて、かつ簡単に利用しやすいものを考えていったときに、ウェアラブルで作ってみてユーザーに試してもらったら非常に好評で。私たちのチームには当時ヒップスターがいなかったので、基盤むき出しのダサイやつだったんですけど(笑)、子どもたちに渡した瞬間に「これ売って下さい」「めちゃくちゃ欲しい」という好反応だったので、このプロトタイプは正しかったんだとわかって、結果的にウェアラブルを採用しました。

田村 日本だと割と最初にモノを作っちゃうんですよね。高萩さんぐらい一生懸命プロセスを考えている人はあまり見たことないから、今日のセミナーにふさわしい人選だったなと改めて実感するんですが(笑)。ビルさんがプロセスはプロダクトより大事だと言っていたとおり、まさにそうですね。Moffの裏にそういう話があったのも今日出た新しい情報のひとつかなと思います。

アントレプレナーシップは「知の集合体」

田村 ビルさん、残念ですが終了時刻が迫ってきました。最後に、伝えきれなかった点などメッセージをお願いします。

ビル まず、今日お招き頂いてありがとうございました。日本には数年ぶりに来たのですが、非常に楽しかったです。ご存じのとおり、世界で様々な変化が起こっています。でも、アントレプレナーシップはなくなりません。たとえ大企業であっても同じで、ソニーもホンダもアントレプレナーのマインドは必要なのです。効率よく効果の高い製品開発が求められていて、そのためのメソッドは同じです。

 日本というのは規律の維持が得意ですし、それを他に適用する点でも長けていると思います。ですので、その特性を大事にして、逆に私たちに新たな知見を教えられるようになってください。

 最初に申し上げたとおり、アントレプレナーシップというのはプロフェッショナルでなければならない、と本気で思っています。この部屋にいる一番頭のいい人ひとりではなく「知の集合体」であることが大事なのです。日本人の知識もどんどん入れていく必要があります。まず実践してみて、それをもっと改善して、私たちにもフィードバックしてください。一緒に投資銀行を見返してやりましょう(笑)。

※本イベントは2014年12月15日に開催しました。