受験はゆるくなったのに
仕事は高度化・複雑化

 また、並行して起こった変化として、大学受験を経ないで進学する学生の増加が挙げられます。

 中クラスの高校であれば、大学受験をする生徒はすでに多数派ではなく 、本来は多様性確保目的で始まったAOや、推薦で進路を決めていきます。これらの比率が、私立大学を中心に40%を超えるようになった結果、1992年に35%だった浪人率が今や、12%まで落ちました(浪人率は前述『学校基本調査』より)。大手予備校が経営難に陥るのもうなずけます。

 片や企業の側では、仕事の難易度、スピードがともに高まり、社員には今までと違って効率性よりも創造性が求められるようになりました。企業として求めるものは高く、複雑になってきています。

 にもかかわらず、大学が「社会の入口」として機能し、少しずつその中で人間的成長を果たした上で企業の門を叩くのではなく、大学の卒業=「社会への出口」として、いきなり企業社会に入るというのは、学生にとっても企業側にとっても、どうにもキツイわけです。

 これらの関係を図(1)と、図(2)に表してみました。
図(1)「オレの頃は」的議論を超えて<br />日本の採用を変えていこう

図(2)「オレの頃は」的議論を超えて<br />日本の採用を変えていこう

 図の縦軸が何であるかとかいう厳密的なことは横において、大学のグラフが低くなり高校に近づくととともに、企業のグラフは高くなっています 。

 従来は、「社会の入口」として機能していた大学生活で、授業以外の時間も含めて、高校まで同様の「教室モデル」一本槍ではない学びの機会に接し、人間的成長を果たす中で、自然と社会に飛び込む準備ができていたのかもしれません。

 もちろん優れた授業は数多くありますが、多くの大学の授業や指導方法が高校化することによって、この機能が弱体化してきました。

 つまり、大学と企業の双方が逆方向に変わることにより、大学⇒企業の「移行ギャップ」が拡大し、社会に出るということが以前よりも大変になってしまっているのです。