打席に立てば失敗もある。
転んで立ち上がってこそ一人前。

内藤 会社を上場したのが2006年の2月で、急上昇した時価総額に追いつくために先行投資で無理してしまったんですよ。翌2007年3月決算が赤字になって、予定していた企業買収は株式市場からの資金調達ではなくて銀行からの借り入れでやりました。
 ところが、2年連続で赤字になってしまうと銀行からの借入金はすぐに返さなければいけなくなってしまうということで、2008年の夏ごろには、次の3月決算は絶対に黒字にしなければ会社の存続すら危ういという切羽詰まった状況に追い込まれたんです。
 ちょうど、杉本さんが破綻したのと同じ時期ですよね。

起業家対談シリーズ第4回 内藤裕紀<br />自分にブレーキが利かなくなる時がある杉本宏之(すぎもと・ひろゆき)[起業家]1977年生まれ。高校卒業後、住宅販売会社に就職、22歳でトップ営業となる。2001年に退社し、24歳でエスグラントコーポレーションを設立。ワンルームマンションの分譲事業を皮切りに事業を拡大し、総合不動産企業に成長させる。2005年不動産業界史上最年少で上場を果たす。2008年のリーマンショックで業績が悪化、2009年に民事再生を申請、自己破産。その後再起し、エスグラントに匹敵する規模にグループを育て上げた。2014年7月、復活を果たしたのを機に著書『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』を刊行した。

杉本 民事再生したのが2009年の3月ですから、2008年の夏はまさに地獄に転がり落ちる最中でした。
 僕は結局破綻してしまったけど、ドリコムは乗り越えた。楽天の三木谷さんはすんなり出資してくださったんですか?

内藤 すんなりかどうかはともかく、思い返してみるとBSやPLがどうしたといった話はあまりしなかったですね。ドリコムの事業の可能性に投資していただいた印象です。

編集部 やはり、ベンチャーが成長していく過程では、一度や二度の危機を乗り越えていくものなんですね。

内藤 そうだと思います。窮地を脱してしばらくしてから、藤田晋さんと食事に行った時「経営者は一度転んで立ち上がる経験をしてこそ一人前になるんだ」と激励していただいたことがあります。

杉本 本当にそうですね。僕の場合、ユニマットの高橋会長や藤田さんに支えていただいたわけですけど。信頼できる経営者の方々は、ほぼ例外なく大変な時期から再起した経験をお持ちです。

内藤 どんな人でも、打席に立てば確率として失敗することはあるからね。でも、一度失敗から再起した経験があれば、二度目の打席は全然違うというのが実感です。

杉本 失敗を恐れてふて腐れたり、勝負できなくなるのはダメですけどね。このシリーズで藤田さんと対談した時も「どん底から立ち直った経営者は買いだ」とおっしゃってました。