2007年10月にマルハグループ本社とニチロが経営統合し、マルハニチロホールディングスが誕生してはや2年。3年かける予定だったスリム化が1年前倒しで達成確実となるなど、早くも統合効果が表れ始めている。積極投資に打って出た同社の内実、今後の問題点を検証した。(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 小出康成)

 宮城県・JR仙台駅からクルマで30分あまり。旧・マルハグループ本社の仙台工場では、1分間に200本のすり身を成型し、焼き上げるまでわずか15分という速さで「ちくわ」を生産している。

 5つあるちくわ製造ラインのうち1つは昨春から旧・ニチロの冷凍食品工場向け専用ラインになった。このちくわは、仙台工場からトラックで約1時間の旧・ニチロの石巻工場に運ばれ、2007年10月に経営統合したマルハニチロホールディングス(HD)の最初の共同開発商品「ちくわ磯辺揚げ」(昨年3月発売)に加工される。

 冷凍食品のちくわ磯辺揚げに関しては、日本水産がシェアを一手に握っている。そこに旧・ニチロが旧・マルハのちくわという武器を得て攻め込んだ。

 「発売当初はラインの生産能力が追いつかないのではないかと心配した」と赤瀬良・マルハニチロ食品仙台工場長は振り返る。

 旧・マルハ、旧・ニチロ経営統合の相乗効果は、それだけにとどまらない。旧・ニチロの石巻工場を例にとれば、冷凍食品のエビフライ、イカフライの原料が、旧・マルハからの内部調達に切り替わりつつある。

 「エビもイカも一割は安くなった」(飽本裕二・マルハニチロ食品石巻工場長)というから、原価低減は1億円近い。

 かたや旧・マルハの仙台工場では、統合前は外部委託だった旧・ニチロの業務用冷凍春巻を生産することになり、鳴かず飛ばずの製造ラインが息を吹き返した。

 この10年間、老朽化から生産中止すらささやかれていた春巻の製造ラインはいきなりフル稼働に転じ、年内には増設も計画されている。

 前出の相乗効果は全体の一部にすぎない。「マルハとニチロには、それぞれ得意分野がある。今、全社でその相乗効果を最大限に引き出そうとしている」(坂井道郎・マルハニチロ食品社長)。