安倍総理は、消費税率10%引き上げ時の延期に際して、2020年プライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)の黒字化については、国際公約でもあるし、きちんと守っていく、との意向を表明した。

 一方、年末の経済財政諮問会議では、総理の意向から財政健全化の評価について、PBに加えて債務残高GDP比などストックの指標も重視することとなった。このことの意味するところは何か、考えてみた。

新たな財政健全化目標の策定

 消費再増税延期はデフレ経済脱却のためということだったが、一方で2020年PB黒字化は守るということになり、今後わが国の経済・財政運営は、経済成長と財政再建の「二兎を追って二兎を得る」こととなった。そして、本年年夏までに、財政健全化に向けての具体的な計画を策定することとなった。

 安倍政権の財政コミットメントの弱さを指摘する市場関係者が相当数いる中で、新たな財政健全化計画の策定をすることは、市場関係者だけでなく国際的にも大いに評価されることであろう。

 しかし、これをめぐる議論を見ると、喜んでばかりはいられない。 昨年暮れ、12月22日の経済財政諮問会議からその議論は始まった。

 口火を切ったのは伊藤元重議員である。

「財政健全化について。日本の財政健全化の目標としてPBをずっと使ってきた。これはもちろん非常に重要ではあるが、そういうフローの部分だけではなく、財政の持続可能性を見るためにはストック面を前面に出す必要がある。……ネットの債務とGDPの比などをしっかりとチェックすることを、これまで以上に検討する必要があると思う」と発言。

 その後、麻生財務大臣などの発言を引き取り、最後に安倍総理は次のような発言をしている。

「2015年度に対GDP比でPB赤字を半減するという目標を立てた。2020年度にはPBの黒字化を目標としているが、これは政府の税収と政策的経費との関係になっている。勘案するものは果たしてそれだけでいいのか。……累積債務に対するGDP比、世界でも割とこれを指標としているところがあるが、GDPを大きくすることで累積債務の比率を小さくすることになる。……もう少し複合的に見ていくことも必要かなと思う」

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/1222/gijiyoushi.pdf参照