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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

アナコンダ部長の締め付けに窒息寸前!
34歳コンサルタントの悶絶(下)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第1回】 2015年2月3日
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>>「アナコンダ部長の締め付けに窒息寸前! 34歳コンサルタントの悶絶(上)」より続きます。

 黒木の「ささやき」が透けて見えてくる。今回のインフルエンザに限らず、自分がいないところで「田口の扱いには困っている」などと、つぶやいていたのだろう。悶々としていると黒木が出社してきて、田口に向かって大きな声で叫んだ。

 「お~、すっきりした表情になっている。君は馬力があるのだから、仕事の遅れを取り戻していただかないと……」

 得意の「部下への敬語」である。みんなが出社し顔をそろえると、こう切り出す。

 「田口君がインフルエンザになったから、心配していた。社長にも報告をしておいたよ。『田口君がいないと部署が動かない』と」

 今度はほめ殺しになる。それが嘘であることはわかる。田口には、黒木が「(巨大ヘビの)アナコンダ」に見えるようだ。アナコンダにつかまり、絞められ、身動きがとれない動物の気持ちがわかるという。

上司である自分は常に正しく
部下であるあなたは常に誤り

 今の田口には、2年前に入社したときの勢いや気負いはない。黒木の「ささやき戦術」により、日を追うごとに衰弱していくという自覚がある。昨日は、こんなやりとりをしたという。職場で田口が、来年度の部署の予算案について意見を口にしたときのことだ。

 黒木が、「いや、そうではなく……」と話を遮り、5分ほど話し始める。意見を否定すると思いきや、結局、田口が述べたのと同じ意味合いのことを繰り返すだけのようだ。田口としては、自分の考えのどのあたりに問題があったのかわからない。黙っていると、黒木が意見を求めてくる。試しに田口は、黒木がさっき話した内容とそっくり同じことを言ってみた。すると、黒木はささやく。「いや、そうではなく……」。

 これでは、何を言ったら黒木の同意を得られるのか、さっぱり検討がつかない。何を言っても、あらゆることを否定される。それでも黒木は、「新規事業の案を出すように」と命じる。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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