なぜ、精神科病院の存在感が高まったのか

 そして決定的な変更もある。7日版で「…精神科病院等からの円滑な退院や在宅復帰を支援する」としていたが、27日版では「医療機関・介護施設等からの退院・退所や在宅復帰を支援する」と変わったことだ。

 精神科病院は退院すべき病院という印象が強かった7日版。欧米並みの基準に近づけようとした表現だ。これに対して、27日版では、介護施設も加えて、一般的な「脱病院・脱施設」へとイメージが拡散してしまった。

 これだけ、書き換えが重なると認知症ケアへの見方も変わらざるを得ない。認知症ケアにとって精神科病院が重要と「納得」させられてしまう。入院を勧められても、疑問を抱かなくなりそうだ。

「時代錯誤も甚だしい」「40年以上前の『恍惚の人(有吉佐和子作)』への逆行」という批判が介護関係者から上がるのも当然だろう。

 では、どうしてこのようなドラスチックな変更が起きたのだろうか。それも、時計の針を逆回転させるような方向に変わったのか。厚労省の担当部局が自らの意志だけで動いたとは思えない。

 ヒントはある。旧オレンジプランのスタート台になった厚労省の認知症リポート、2013年6月18日の「今後の認知症施策の方向性について」に日本精神科病院協会が反論した事件である(詳細は連載第10回)。「精神科病院の関与なくして認知症施策は成り立たない」とする同協会が何らかの「圧力」をかけたと想像するのは容易い。これだけ、精神科病院の存在を高める方向に向かったのだから。

 だが、日本独特の風習である「根回し」を考慮すれば、関連業界団体が7日版の発表前に知らされていないことは考え難い。国会議員からの相当な介入があった、とも言われる。本当だろうか。

 首相が国際会議の場で高らかに宣言した初の国家戦略である。国際公約である。政府首脳の意向が反映されないはずはない。いずれ真相が明らかにされるだろうが、舞台裏での「暗闘」は続きそうだ。