日本発のIoTソリューションをつくる!<br />元ブリヂストン常務が考え出す「FOA」とはおく・まさはる
1950年岡山県生まれ。73年長崎大学工学部電気工学科卒業。ブリヂストン入社。89年、買収直後のファイヤストーン社(米国アクロン)に派遣。以後20年にわたってブリヂストン流のものづくりによる立て直しと、ブランド価値の向上に奔走。2000年、タイヤ生産技術の取締役。02年取締役常務執行役員。07年ブリヂストンサイクル代表取締役会長を兼任。11年smart-FOAを設立、代表取締役社長に就任。
Photo by Yasuo Katatae

外資系ITベンダーが声高に叫ぶIoT(Internet of Things:モノのインターネット)。ものづくり現場の活用事例として、インダストリアル・インターネットを提唱するGE、産官学一体のプロジェクトを推進しているドイツ政府の「Industry 4.0」などが有名だが、いずれも海外主導だ。日本での事例が数少ないなかで、日本発のIoTソリューションをつくるべく奮闘する企業がある。元ブリヂストン常務で、長年グローバルに生産現場を飛び廻った奥雅春氏が2011年に設立したsmart-FOAだ。現場の実践経験から生み出されたFOA(Flow Oriented Approach)に基づく、日本のものづくりの現場に合ったIoTソリューションを提供しようと熱意を傾け、奮闘を続ける。昨年にはシスコシステムズ(以降、シスコ社)からも出資を受け、その動向には注目が集まる。奥氏にFOAや日本のものづくりの現場が抱える問題などについて話を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 片田江康男)

単に見える化しても
カイゼンしない

――御社が提唱しているFOAとは、どういうコンセプトなのでしょうか。

 FOAは「Flow Oriented Approach」の略です。弊社はこのFOAのコンセプトをベースにしたソフトウェアを開発し、ものづくりの現場にFOAシステム導入と現場データ活用のコンサルティングを提供する会社です。理念は「世界中のものづくりを愛する人のために」です。

 そのFOAなんですが、今までものづくりの生産現場にあった「イベントデータ」と、その背景となる「因果関係データ」を、「情報短冊」として整理して、それをインターネット上に流しておこう。そして、それを誰でも必要なときに見れる、アクセスできるようにしよう。こういう考えが基本です。

――いくつか聞き慣れない言葉が出てきたのですが、まず「イベントデータ」と「因果関係データ」というのは、どういうものなのでしょうか。

「イベントデータ」というのは、たとえば計画通りに「良品が一個できた」とか、計画外に「不良品が出た」とか、「設備やプロセスに異常が起きた」など、現場で発生した様々な「事象」のことです。工場にいれば、こういう「事象」は日常茶飯事ですよ。

 それで、「因果関係データ」というのは、起こった「事象」に対する「なぜ」「どうして」という情報です。

 生産現場にはさまざまなデータがあるんです。熟練の工員が持っている知恵、ノウハウといったものも明示化できればひとつのデータですし、設計書や規格書などもデータです。もともと、生産現場には、しまい込まれて、積み上げられたデータというものがあるんですよね。