詐欺まがいの“輩”より“正論モンスター”のほうが恐ろしい

 異物混入をめぐるクレームは、「事実」にもとづいて発生していることが多い。なかには、ありもしないことをでっちあげて、金品をだましとろうという詐欺まがいもいるが、そうした輩よりも、正論をふりかざして一歩も引かないモンスターのほうが対応に苦慮する。

 そもそも、食品への異物混入がゼロになることはない。食品加工の現場では、どんなに優れたシステムを導入しても、一定の割合で事故は起きてしまう。 また、異物の混入ルートを特定するのも容易ではない。仮に、製造や流通の過程で混入する確率が1パーセント未満であっても、自社の過失を完全否定することはできない。

 ところが、正論モンスターは、異物混入を「絶対にあってはならないこと」として、企業側の説明にはなかなか納得しない。

 異物混入騒動に見る「恐怖」は、異物混入による健康被害よりも、普通の人が「クレーマー体質」になっていることではないだろうか? すでに、こうした正論モンスターは、さまざまな場面で“活躍”している。

「マスコミに言うぞ」「ネットで流すぞ」――これは、かつて悪質クレーマーの常套句だった。企業を揺さぶるための脅し文句である。

 ところが現在は、「普通の人」がこんな前フリを口にすることもなく、ネット上に苦情をぶちまける。

 異物混入などでは、消費者が証拠として現物の写真を撮ることは以前からあったが、それは企業側の言い逃れを阻止するための「自己防衛」ともいえる。

 しかし、インターネットの普及によって、こうした証拠写真は企業を「攻撃」する手段にもなっている。クレーマー体質になってしまった人々は、「あわよくば……」という誘惑にかられることが少なくないが、そんなとき、彼らはネットを通じて一般消費者の応援をとりつけることができるのだ。世間が騒げば騒ぐほど、クレーマーには追い風となる。