ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
Close Up

九電で日本初のプルサーマル開始
“展望なき先送り策”のあだ花か

週刊ダイヤモンド編集部
2009年12月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

九州電力は12月2日、玄海原子力発電所三号機で、国内初となるプルサーマルの営業運転を開始した。原発で燃やした後のプルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の歯車が計画から10年遅れて、一つ動き出した。だが、現場の負担や不安をよそに、最終ゴールはまったく見えない。

1975年に運転を開始した玄海原子力発電所。電気出力は、4基合わせて347.8万キロワット。周辺は民家が並び、畜産や農業にいそしむ住民の姿がある

 12月上旬、佐賀県玄海町。原子力発電所そばの墓地を掃除していた71歳の男性が重い口を開く。「『安全だ』と皆言うけど、そりゃ不安ですよ。昔は大反対した。でも、今はその九電に子どもが勤めているからね」。地元住民でつくる「玄海原発対策住民会議」の藤浦晧会長は「各集落に九電関係者がおり、まともに反対の声が出せない。沈黙の町だ」と述べる。

 人口約7000人の玄海町で原発関連事業が1000人を超える雇用を生む。原発があることで、これまでに国や県から電源立地関連の交付金など約240億円を受け取っている。年間予算規模約70億円に対し貯金に当たる基金が約120億円に積み上がった。

 岸本英雄・玄海町長は「佐賀のチベットといわれるほど貧しかったが、原発の交付金などで今は安定している」と言う。プルサーマルの見返りに30億円の核燃料サイクル交付金が入り、新エネPR施設や薬草園の建設などに充てる。

 玄海原発を訪ねた。内部は、作業員よりもガードマンや警察官の姿が目につく。荷物検査などのたび重なるチェックを受け、携帯電話も預けた。見学者向けに整備されたこぎれいな通路や展示物は、もはや無用の長物となっていた。テロ対策の厳重な警戒体制──窒息しそうな重苦しさだ。

 プルサーマル開始前は、今以上の異様な緊張に包まれていたという。事故など起こりえない場所で足を滑らせて骨折するなど、3件の労災が続いた。執行役員の村島正康・玄海原子力発電所長は「普段どおりやるようにお願いしたい」と下請けなどの協力会社に要請しなければならないほどだった。

 こうした関係者の緊迫感は、佐賀県民の抵抗ゆえなのかもしれない。一般の主婦らが主力となった市民団体は2007年、署名を集めてプルサーマルの賛否を問う県民投票条例制定の請求をした。県議会で否決されたが、活動を続けている佐賀市の石丸初美さんは「今でも、県民にはまともな説明がない」と憤る。「NO!プルサーマル佐賀ん会」(満岡聰共同代表)は今回、反対のため全国47万5000人の署名を集めている。

 当然、九電は地元対策に神経質にならざるをえない。玄海町に隣接する唐津市には10年4月、早稲田大学の系列校が開設される。九電は09年2月、開校資金の半分に当たる20億円を寄付すると発表した。九電としては過去最大の額だが、最終赤字へ転落しかねない時期に浮上した案件だった。「社内では、赤字決算で寄付となれば、『株主代表訴訟になる』という心配もあった。黒字になって安心した」(九電関係者)。

1
nextpage

今週の週刊ダイヤモンド

2017年1月28日号 定価710円(税込)

特集 劇変世界を解く 新地政学

世界史の大転換が始まる

【特集2】
銀行界も戦々恐々
コンビニATM戦争

【下記のサイトからご購入いただけます】

(ストアによって販売開始のタイミングが異なるため、お取扱いがない場合がございます)

【下記のサイトからご購入いただけます】

(ストアによって販売開始のタイミングが異なるため、お取扱いがない場合がございます)

【下記のサイトからご購読いただけます】

(ストアによって販売開始のタイミングが異なるため、お取扱いがない場合がございます)

スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

週刊ダイヤモンド編集部


Close Up

激動する世界経済の流れに、日本も無縁ではいられない。政治・経済、企業・産業、社会の注目テーマをクローズアップし、独自の視点、切り口で「詳説」する。

「Close Up」

⇒バックナンバー一覧