再生紙偽装問題で、業界最大手の王子製紙の鈴木正一郎会長も4年前には偽装の実態を認識していたことが、本誌が新たに入手した内部会議の資料などで明らかになった。すでにネット配信しているように、別の会議資料では、篠田和久社長が隠蔽を指示したことが明らかになっており、発覚後の記者会見や経済産業省への説明が虚偽だったことで、経営陣の責任が問われそうだ。

 問題となっているのは、今から4年前の2004年3月1日、東京・銀座の王子製紙本社で開かれた「洋紙競争力強化会議」。参加したのは、当時の会長である大國昌彦氏を除いた、鈴木会長(当時は社長)ら全取締役8人。さらに篠田社長(当時は常務執行役員)を含めた執行役員、工場長クラス16人も出席するという幹部勢揃いの重要なものだった。

 その席上で鈴木会長は再生紙偽装を認識していることがうかがえる発言をしていた。それは「グリーン100」と呼ばれるDIP(古紙パルプ)配合率100%の古紙に関するくだりである。

 鈴木会長は、「グリーン100では具合が悪い。白色度アップとDIP配合率100%の両方の客先要求を満足することはできない。うちはできませんと言い、他のモラルの低い会社はできますと言って、取られてしまう」と、受注を失ういらだちをのぞかせていた。

 じつは、2月に王子製紙が提出した再生紙偽装の報告書では、グリーン100の偽装について「より白色度が高く、塵の少ない競合他社品と同品質への向上を顧客から求められ、安易にフレッシュパルプを混ぜて対応した」ほか、「顧客の要望に応えなければ受注を失うため、なんとしても受注を失いたくないという意識があった」とその原因を分析しており、経営陣はこの実態を知らず、現場が勝手にやったことと結論づけている。

 現に報告書では「現在の経営トップが(古紙配合率の)乖離を知ったのは本年1月の年賀はがき問題報道を受けた社内調査の結果報告を受けた時期」としている。

 ところが、鈴木会長の発言と報告書を比べると、内容はそっくりなのが見て取れる。つまり、鈴木会長は4年前には偽装の実態を明らかに認識していたといえよう。