「土下座事件」の本当の問題はどこにあるか?

 臭いものには蓋をする――。クレーム対応で企業が陥る罠は、こうした意識のなかに潜んでいる。「異物混入」や「食品偽装」に限らず、クレームに対する及び腰が、問題を大きくしていることに気づいてほしい。

 端的な例が昨年9月に起きた「土下座事件」。大阪府茨木市のコンビニで店長らが男女4人の客に言いがかりをつけられ、タバコ6カートンを脅し取られたうえ、土下座をさせられた事件である。このときも、土下座シーンが動画サイトに投稿された。

 ここで問題にしたいのは、この事件が発覚した経緯だ。もし、動画サイトに映像が乗らなければ、事件にならなかったのではないか、という疑念である。

 いうまでもなく、コンビニには防犯カメラが設置してある。ということは、土下座を強要されている被害映像は、被害者(店舗)側にも存在するはずである。しかし、犯人が逮捕されたのは、店舗が警察に被害届けを提出したからではない。リアルで衝撃的な映像がネット上で話題になったため、警察が動いたのである。

 このケースはまさに恐喝事件であり、一般的なクレームよりはるかに深刻なはずだが、それでも店舗側は逃げ腰の姿勢をとっている。そして、その根底には「事なかれ主義」がある。言い換えれば、傍若無人な“輩”は、「組織の隙間」という“闇”に巣食うのである。