政府や経済界、メディアや有機者は「多様な働き方」を提言する。その1つに女性の職場進出があり、「育児をしながら働くことができる職場」づくりの重要性が唱えられる。

 これが、今の企業社会を覆う「空気」となり、1つのタテマエとして職場に浸透しつつある。しかし、実際の職場のホンネはそれとは大きく異なる。ホンネは、「みんなで支えるレベルに達していない人は追い出そう、厄介者扱いをしよう」という部分にある。

 今回は、育児休業を終え職場復帰した女性が働く職場に潜入し、上司や同僚らから聞いた話を基に、職場の暗部に迫りたい。


私生活を犠牲にしながら
育児休業明け社員を守る女性課長

「育休明け社員」に寛容な女性課長の黒い本音(上)

「うちも育児休業し、復帰するケースが増えている。復帰しても、元のペースで仕事を進めることがなかなかできない。体調が戻らないみたいね。それで、この人がフォローしている。仕事の量は、こんなに(手を広げて)膨れ上がっている」

 50代後半の専任部長が左隣に座る、50代前半の女性課長の奮闘を称える。専任部長は「一時定年」(56歳)でいったん部長職を離れ、1年前に専任部長となった。「役職定年」に近いものだ。

 女性課長は「ええ」「はい」とかすかに聞こえるような声を出し、時折軽く笑ったり、うつむいたりする。どのように振る舞えばいいか、困っているようだった。筆者は、このコンビとは10年ほど前に知り合った。それ以降、年に数回のペースで雑誌などを一緒につくっている。

 ここは、社員数が500人ほどの教材編集販売会社。民間企業や病院などで働く人向けの「社員教育」ビデオ、DVDなどをつくっている。業界では、比較的上位に位置する。専任部長は、もっと何かを言いたいような雰囲気を見せていたが、黙ってしまった。女性課長が独身で、子どもがいないことに配慮をしたのではないか、と筆者は察した。