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ビジネスモデルの破壊者たち
【第333回】 2015年2月18日
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瀧口範子 [ジャーナリスト]

便利さと引き替えにどんどん縮む
われわれのプライベート空間

サムスンは何を間違えたのか?

サムスンスマートテレビの音声コマンド操作説明(サムスンWebサイトより)

 2月初め、サムスンがプライバシー問題でひどく叩かれた。同社製のスマートテレビに搭載した音声認識システムのためだ。

 このシステムは、利用者がリモコンを押してチャネルを切り替えたり番組を検索したりする代わりに、音声で指示を出せばスマートなテレビがその内容を理解して、目的の番組をスクリーンに呼び出してくれるという機能。口にすればいいのだから、ユーザーにとっては実に便利な機能だ。

 ところが、製品の利用説明の中に、音声認識の起動中「テレビはユーザーの言うことに耳を傾け、その内容をサムソンやサードパーティーと共有することもあります」「話したことばの中にパーソナル情報や繊細な情報が含まれていると、それもサードパーティーに送信されるデータに含まれてしまいます」と書かれていたのだ。これが問題になった。

 一体、何を共有するのか、共有する相手は誰なのか、そしてなぜ共有する必要があるのか、これはユーザーの会話を盗聴するスパイ行為ではないのかと、数々の疑問と批判が集中したのだ。挙げ句のはては、国家が市民を監視するジョージ・オーウェルの『1984』そのものではないのかという意見まで噴出した。

 サムスンにとっては、近未来的なスマートな機能を付けたはずだったのだが、一転してかなり重度のネガティブプレス、つまり悪評となってしまったのである。

 同社は、すぐに声明を発表して誤解を解こうとした。つまり、音声認識機能はオフにできる。テレビをWi-fiネットワークと接続しないことも可能。もし、音声認識機能を利用するならば、その間口にするのはテレビへの指示と検索用の文だけに制限されるよう。音声認識機能が起動していることは、テレビのスクリーン上にマイクロフォンのアイコンが表示されているので、明確にわかるはず、などの内容だ。

 その上で、サムスンはユーザーの音声データをサードパーティに売っているのではないと、念を押した。収集されたデータはサーバーに送られ、要望のコンテンツを探し出すのに利用されて、テレビのそのコンテンツを表示するのに用いられる、と解説した。別の報道で、そのサードパーティーとはニュアンス・コミュニケーションズであることも明らかになっている。古くから音声認識技術を開発してきた会社である。

 というわけで、サムスン自体は誤解を逃れたが、この一件が近い将来のIoTやスマートホームの闇を伺わせてしまったことは間違いない。一体、どこまでどんな機器がわれわれをスパイするようになるのだろうか、という恐れである。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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シュンペーターの創造的破壊を地で行く世界の革新企業の最新動向と未来戦略を、シリコンバレー在住のジャーナリストがつぶさに分析します。

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