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辻広雅文 プリズム+one

西川・日本郵政社長に辞任を促した超大物財界人とは誰か

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]
【第76回】 2009年7月2日
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 西川善文・日本郵政社長を巡る人事騒動には、あまりに多くの政治家、官僚、財界人が、それぞれの利害を持って関わったために、メデイアにおけるさまざまな分析、解説は、それぞれ事の一側面を照らし出すにとどまらざるをえない。むろん、このコラムもその限界を超えるものではないけれど、ある人物を中心に、知られざる事実を含めて、経緯を改めて整理してみたい。浮かび上がる構図は、これまで伝えられてきたものとずいぶん違う。

 ある人物とは、麻生総理である。総理周辺、さまざまな関係者の話を総合すれば、麻生総理は、西川社長を経営者としては当初から評価していなかった。麻生総理は内々の会合で、「西川社長に任せていては、郵貯会社を上場させることはできない」と口にしている。

 人は分野を問わず、輝かしい業績や成果を上げれば上げるほど、その影絵は大きく明瞭になってついてまわる。ポジとネガのいずれを重視するかで、人の評価は変わる。その手法、人柄に対する好みも分かれて、絡み合う。西川社長は、まぎれもなく銀行界屈指の辣腕バンカーであった。だが、麻生総理は、「西川社長の多くの情報を集めた」(周辺)上で、その能力を評価していなかった。「自分と合わないと感じていた」(周辺)という見方もある。

 したがって、盟友と言われた鳩山邦夫・前総務相が、西川社長の経営に難色を示し始め、かんぽの宿問題に火をつけた頃から、麻生総理は秘かに賛意を示している(鳩山氏がなぜ西川社長を忌避したがったのかは、私にはわからないので、ここには記さない)。鳩山氏が、「麻生総理は“反西川”だった」と繰り返し述べているのは、本当である。

 ただし、麻生総理は、二つのアドバイスを鳩山氏に送っている。第一は、総務相は日本郵政社長人事の認可権を持っているが、だからといって解任できるわけではない。西川社長を追い込むには、世論が納得する事実および理論構築が必要であること。第二は、西川社長の後任に、官僚出身の高木祥吉副社長を当てることは許されないこと。後任人事には熟慮してほしいと釘を刺した麻生総理は、後任者の案まで明かしている。これが、鳩山氏が総務相辞任後に明らかにした、「麻生総理から送られてきた社長候補者リスト」である。

 大上段に刀を振り上げてしまえば、振り下ろし方とその時を計るのは、極めて難しい。それは、鳩山氏も飲み込んでいたから、西川社長に自発的辞任を促す仕掛けを作った。超大物の財界人を密使に立てた。奥田碩・トヨタ自動車相談役である。

 ただし、鳩山前総務相と奥田・トヨタ相談役は、親しい間柄にない。要請は鳩山氏から麻生総理へ、麻生総理から張富士夫・トヨタ自動車会長、そして奥田氏へという仲介ルートでなされたと思われる。麻生総理と張会長は信頼関係にあり、かねて米国GM問題に日本の自動車産業がどう関われるかを話し合うほど親密である。

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辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。


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