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いよいよ白熱するロシアの「エネルギー帝国化」脅威論

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第40回】 2008年8月5日
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 ここに来て、 「ロシア脅威論」という言葉が市場関係者のあいだで語られることが多くなった。それは、ロシアという大国が、世界の勢力図を塗り替えかねない「超エネルギー帝国」にのし上がりつつあることへの懸念だ。今回は、その実態に迫ってみよう。

 1991年12月のソビエト連邦解体後、ロシアは初代大統領ボリス・エリツィンの下で市場型経済を指向した経済改革を行なった。しかし、需要の拡大に対して供給能力が追いつかず、激しい物価上昇=ハイパーインフレが発生し、国内経済が厳しい状況に追い込まれた。

 その後、90年代中盤にはしばらくインフレも沈静化し、経済も回復の道を歩み始めた。ところが、97年に始まった“アジア危機”の影響で原油価格が弱含んだこともあり、98年8月、ロシア経済は再び危機的な状況に落ち込み、“ルーブル危機”が発生することになる。

 “ルーブル危機”は、当時の世界の金融市場に大きな衝撃を与え、それをきっかけに、有力ヘッジファンドである米LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)が破綻したことは、あまりにも有名だ。

 2000年代に入ると、原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇を背景に、高い経済成長を維持するようになり、最近では、世界有数の“エネルギー帝国”と称され、BRICsの一角を占めるまでに至っている。

高いインフレ率やエネルギー輸出依存度
難題を抱えるロシアの「内情」

 現在、ロシアは、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油輸出国である。また、天然ガスを含めたエネルギー供給能力は、圧倒的なマグニチュードを誇る。同国は、まさに“エネルギー帝国”の名に値する存在だ。ロシア経済は、過去数年間の世界的なエネルギー需要の増大に伴う、原油・天然ガスの価格高騰に支えられて高い成長を続けており、今や90年代後半の“ルーブル危機”当時の面影を感じさせない勢いがある。

 そのエネルギー輸出代金によって、多くの新興財閥が誕生しており、彼らは、現在、中東産油国と並んで、「世界で最も大きな富を手にした人々」と言われている。ロンドンの中心街では、毎日のようにロシア人富豪のパーティーが開催されることもあるという。

 国内経済に目を転じると、今年1-3月期のGDP成長率は8.5%増と、前期対比でやや成長率が落ちたものの、世界的な資源価格の高騰によって、鉱業部門を中心に生産活動が堅調で、雇用・所得環境も安定している。それ以外の分野でも、建設業や小売業などが高い伸び率を示している。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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