上田 先月、洞爺湖サミットが開催されましたが、日本の悲願である「国連安全保理理事会の常任理事国入り」は、何度挑戦しても何故受け入れてもらえないのかと改めて感じました。

竹中 そうですね。政治の世界では、常任理事国入りや軍事の話で日本がより責任ある地位に立とうとすると、それを抑制する国際的な力が働くことが多い気がします。それに、日本は「消極的で付き合いベタ」という国民性がありますから、それも交渉に影響しているのでしょう。

上田 しかし、そんなことも言っていられません。日本が常任理事会入りを果たすには、どうすればいいんでしょうか?

竹中 最も効果的なのは、「ダボス会議」をフル活用することです。

上田 国際会議として名高い、あのダボス会議がそれほど重要なんですか? ダボス会議は、毎年1月か2月に、1週間に渡ってスイス東部のスキーリゾート地・ダボスで開かれる会議ですね。正式名称は「世界経済フォーラム年次総会」。会議の発足は1971年で、当時は「欧州経営フォーラム」という名称でした。

 その名のとおり、欧州の経営者向けの研修・意見交換の場でしたが、1974年から政治家も招かれるようになり、1996年頃からは、グローバル化する世界の問題を積極的に取り上げるようになりました。

 参加者は世界のキーパーソンばかり。今年参加した顔ぶれを見ると、米国からはライス国務長官、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長ら、そうそうたる面々です。また英国からは、ブレア前首相、ロックバンド「U2」のボノさんらが、日本からは福田康夫総理大臣らが参加していますね。

政府ではなく非営利団体が運営
サミットより重要なダボス会議

竹中 私もこれまでに10回ほど参加しています。ダボスはチューリッヒから2時間以上かかる不便な山の中にあります。最初は村興しの一環として始まり、参加者は100~200名の経営者のみでした。それが30数年を経て、今や世界の最も重要な会議の1つになったんです。

 これは政府とは関係なく、「ワールド・エコノミック・フォーラム」という一非営利団体が開催している会議ですが、「ダボスに行けば世界中のキーパーソンに会える」と、要人がどんどん集まって来ました。また、大きな魅力はサミットの3倍ものメディアに取り上げられること。それを活用しようというのも参加者の狙いです。

上田 サミット以上に注目されているとは、驚きですね。

竹中 今年は福田総理も出席されました。ここ数年は、サミット議長国の元首が毎年1月にダボスでアジェンダを打ち上げてマスコミにアピールし、夏のサミットに臨むという流れが定着しています。

上田 ダボス会議が世界の動向に大きな影響を与えたケースは、実際にあるんですか?