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石上純也
建造物と風景との境界を取り払う

週刊ダイヤモンド編集部
【第47回】 2008年9月26日
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石上純也
写真 加藤昌人

 建築家としてより、アーティストとしての評価が先行してきた。

 ミラノサローネ(国際家具見本市)に出展したトヨタ「レクサス」のブースを飾ったテーブルと椅子は、パリ・ポンピドーセンターのコレクションに収められ、キリンアートプロジェクトで「キリン賞」を受賞した9.5メートルの長大なテーブルは、スイス・バーゼルでのアートフェアへの出品を経て、イスラエル美術館所蔵となった。

 だが、「あくまで建築というフレームをはみ出すつもりはない」。テーブルも椅子も空間の一つの構成要素として、緻密な構造解析を行なう建築的手法で作り上げた。

 最初に手がけた建造物は、2008年1月に竣工した神奈川工科大学の「KAIT工房」だ。四方をガラスに囲まれた2000平方メートルの巨大空間には、視界を遮る壁はどこにもなく、厚みも幅も設置角度も微妙に異なる無数の薄い板状の白い柱だけが存在し、屋根を支える。専用の設計ソフトを開発し、2年を費やしミリ単位で調整した。「閉じていると同時に開いている自然林のような空間」が出現した。

 2008年9月の「ヴェネチア・ビエンナーレ」建築展に日本代表として参加する。図面や模型ではなく、あえて実物を出品する。日本館の敷地内に建てるガラスの温室は、「庭園に溶け込むほど、存在感を希薄化させる」つもりだ。建造物と風景との境界をあいまいにする大胆な試みである。

(ジャーナリスト 田原 寛)

石上純也(Junya Ishigami)●建築家。1974年生まれ。東京藝術大学大学院修士課程修了。妹島和世建築設計事務所を経て、2004年石上純也建築設計事務所設立。2005年若手建築家の登竜門であるSDレビューで「SD賞」、東京電力主催の住宅プロジェクトで最優秀賞受賞。

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