相続税対策は直前でも十分可能なのに、諦めてしまうのは実に惜しいことです。孫への贈与はもちろん、最近は資産保有会社を使って相続税も贈与税も大幅に圧縮するケースが増えています。ただしそれには注意が必要です。被相続人の余命が3年以上かそれとも3年未満かで、直前対策の明暗が分かれるのです。

駆け込み対策には孫の手を借りよう

「普通のサラリーマンにも相続税対策は必要です。55歳になったら節税対策に着手して、じっくり20年かけて取り組めば、老後資金も確保しながら子どもや孫に資産が残せます」

不動産は「個人」「法人」どちらの保有がトクか?<br />【働き盛り世代の余裕資金を作る法】キャピタル・アセット・プランニング
代表取締役社長
北山雅一

 講演会などでこのように話すと、「うちの親は80歳を超えているから、そんなに時間はない」「60過ぎたらもう手遅れなのか」と聞かれることがあります。

 もちろん、諦める必要はありません。直前になっても打つ手は残されています。

 例えば、親の相続の場合。あなたやあなたの兄弟の子ども、つまり孫がいるなら、相続税を減らして次世代に資産を引き継ぐ確実な方法があります。一世代飛び越して、祖父母から孫に直接、贈与するのです。

 通常、相続開始前3年以内に贈与された財産については相続したものとみなされて、相続財産に加算して課税されます。つまり、3年以内に相続が発生すれば、贈与した意味がなくなってしまうということ。

 ただ、3年以内の贈与が問題となるのは相続人だけです。従って、相続人でない孫への贈与であれば、直前対策としても使えるというわけです。

 前回お話したように、基礎控除後の課税価格で300万円から3000万円までの贈与の税率は今年から引き下げられていますから、贈与税を払ってある程度の額を孫世代に移転するのもいいでしょう。

教育資金贈与は本当に得なのか?

 孫への贈与というと、2013年4月から導入された教育資金贈与の非課税制度を思い浮かべる方も多いかもしれません。

 しかし、あちらは使い途が教育資金に限定されることや、贈与を受ける側が30歳未満でなければならないなどの条件があります。さらに、30歳時点で使い残した額があれば贈与税が課税されてしまいます。

 信託銀行などがこぞって専用商品を発売したこの制度ですが、活用すべきかどうかは判断の分かれるところです。

 そもそも制度導入の以前から、祖父母が孫のために支払った教育資金には贈与税はかからないこととなっています。相続税法では、親や祖父母などの扶養義務者が生活費や教育費を贈与しても、通常必要と認められる範囲であれば、金額の多寡に関わらず贈与税は課されないからです。

 高額な海外留学の学費(ハーバード大学の年間授業料は500万円もします)や、6年間で少なくとも2000万円以上はかかる私立医大の授業料も、その都度、直接宛てるための贈与であれば贈与税はゼロ。

 一括贈与をしたのはいいけれど、使い切れずに後から課税されるなどという事態を避けるためにも、教育資金贈与の非課税制度の活用には慎重になることをおすすめします。