橘玲の日々刻々 2015年2月27日

イスラームとISISは本当に無関係なのか?
[橘玲の日々刻々]

 クリシェはフランス語で「常套句」「決まり文句」のことです。面倒な問題を考えたくないときや、複雑な話をわかりやすく説明したいときにクリシェは多用されます。誰もが直感的に「なるほど」と思いますが、どこか胡散臭いのがクリシェの特徴です。

 ISIS(アイシス/「イスラム国」)の台頭とともにあらゆるメディアに頻繁に登場するようになったクリシェに、「イスラームは平和を愛する宗教で、『イスラム国』とはなんの関係もない」があります。

 ISISの所業はきわめて残忍ですから、大多数の穏健なムスリムが「あんな奴らと一緒にされたくない」と憤るのは当然です。しかし「本人(信者)がちがうといっている」というだけでは、「だったらなぜ『イスラム国』なのか」という素朴な疑問にこたえることができません。

 イスラーム社会ではウラマーと呼ばれる知識人(法学者)が大きな権威を持っています。ISISやアルカーイダの主張は、ムハンマドの言葉(クルアーン)を引用するウラマー(を名乗る者)によってインターネットで“布教”されています。それに感化されるのはムスリムの若者で、他の宗派や無宗教の人間にはまったく影響力がありません。

 テロ組織に身を投じた欧州のムスリムの多くは、移民の中流家庭に生まれ、大学を卒業して仕事や家庭を持つ「同化」の成功例とされていました。最貧困層は生きるのに必死で、政治や宗教にかかわってなどいられません。「正義」について考えたり、アイデンティティで悩むのは、それができる経済的余裕があるからです。

 ISISがいかに悪逆非道であっても、彼らは狂人の類ではなく、その行動はクルアーンやハディース(ムハンマドの言行録)、シャリーア(イスラーム法)を根拠に正当化されています。そこに一片の「真実」もないとしたら、欧米で高等教育を受けたムスリムの若者がISISに共感する事実を説明できません。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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