旅行の枠組みを超え
広く交流文化を推進

鎌塚 JTBグループは、さらに旅行の枠組みを超えたビジネスにも領域を拡大していますが、それらの根底にあるのも「交流文化」なのですね。日本の食品や農産物をグローバルに流通させたい国内のサプライヤーと、付加価値の高い日本の商品を求めている海外のバイヤーとの出会いを提供するビジネスマッチングは、まさにその典型のように思われます。

髙橋 象徴的な事例が昨秋に開催した「沖縄大交易会」です。24時間稼働の空港を有してアジアの主要都市にも程近い那覇に全国から産物を集め、アジアのバイヤーとビジネスマッチングを行ったところ大盛況でした。日本の食は世界に誇れるものです。地域の食と世界をつなぐことも、政府の掲げる「地方創生」「クールジャパン」へと結び付くでしょう。それに伴ってモノの流れが生まれ、「人流」も活発化するはずです。

 地域活性は一過性のものではなく、持続可能な仕組みにする必要があります。全都道府県に拠点を持つDMC(Destination Management Company=地域資源を活用したオンリーワンのサービスを提供する企業)として、商品・コンテンツ開発のコーディネートから、食農観光分野の人材育成までを担い、日本の食農と世界を結ぶサイクルをつくりたいと考えています。

鎌塚 そうなると、今までとはまったく異なる業界の企業と競合していくことになりますね。「どうしてJTBがこの場に居るのか?」と不思議がられるケースも出てきそうです。

髙橋 広告代理店やコンサルティング会社といった異業種と競うことになりますね。私どもの強みは、「人を動かす力」です。どれほど美しい絵を描いても、人が集まらなければ意味がありません。その点、最終的に人を動かすことこそ、私どもが培ったDNAです。

人と人との交流を
通じて「公益」を担う

鎌塚 円安や東京オリンピック開催決定なども影響してか、訪日外国人が急増中です。国が掲げる年間訪日外国人数2000万人の目標を目指す上では、どういったことが課題となってくるとお考えでしょうか?

髙橋 昨年、訪日外国人数は1300万人を超えましたし、今年は1500万人を超える見込みです。2000万人という数字が現実味を帯びてきていますが、すでに都内のホテルは飽和気味で、その数を受け入れるには、地方への分散が必要です。

 それぞれの地域には外国人が好む素材が多く存在している半面、それらを磨き上げて商品化し、いかにプロデュースしていくかが課題となってきます。JTBグループはその“目利き”として、外国人に好まれるコンテンツの開拓に励んでいきます。

鎌塚 グローバルに視野を広げると、テロなどを通じて対立構造が深刻化しています。文化や宗教の違いを超えてお互いに分かり合う上でも、こうした草の根レベルの人的交流は非常に意義深いものだといえそうです。

髙橋 人と人との交流には、コミュニケーションがベースとなってきます。交流をすることで世界平和にもつながります。その一方で私どもは人を動かすことで地域を活性化し、社会に貢献する=「公益」を担っていると自負しております。

インタビューを終えて
 髙橋社長の受け答えは冷静沈着ですが、経営の現場においてはM&A戦略を駆使するなど大胆さも備えています。「交流文化事業を推進するJTBグループ」への進化に、新たなビジネスモデルへの挑戦と、今後を切り開く可能性を感じました。

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