『週刊ダイヤモンド』3月7日号の巻頭特集は「マンション・戸建て 高く売れる家 売れない家」。ここでは、バブル期並みに高騰している不動産相場の状況を紹介しましょう。

「都心なら築後15年でも、購入価格の150%程度で売れることは珍しくない」

 不動産業界関係者がこう明かすように、今、大都市圏の中古マンションの価格は、高騰している。

 この10年間を見れば、日本で前回、不動産価格が上昇したのは2007年のこと。その時期は業界関係者の間では「ミニバブル」と呼ばれている。

 東京カンテイによれば、実は、多くの大都市圏で中古マンションの相場が「07年のミニバブル期並みの水準にまで上がってきている」(髙橋雅之・東京カンテイ主任研究員)のだ。

 その背景には、デフレ脱却を目指すアベノミクスがある。前例のない金融緩和に加え、大企業の業績が回復し賃金水準も上がり、株式相場の上昇で資金に余裕が出た層が登場。そうした層が、まず向かったのが、新築のマンションだ。ところが、資材価格や労務費の高騰もあって新築のマンションの供給が絞られたことにより、すぐさま価格が高騰した。

 実際、不動産経済研究所によると、14年の首都圏の新築マンション平均価格は前年比2.7%増の5060万円。5000万円台となるのは、なんと、バブル末期の1992年以来である。

 そこで、「新築は高いけど中古なら」と考え、波及する形で中古マンション相場が上昇しているのだ。

 さらに、20年の東京オリンピックごろまでは相場が上昇するとみる業界関係者や消費者は多く、1~2年待っていても相場が下がらないのなら、買ってしまおうという判断にもつながっている。

 また、今、都心のタワーマンションを節税目的で購入する地方の富裕層が急増している。加えて、台湾をはじめとするアジアの一般消費者も日本の新築・中古マンションを続々購入しているのだ。

 まさに、買いが買いを呼ぶような状況になりつつあるといえよう。

 裏を返せば、今はマンションを所有する人にとって、絶好の売り時なのである。しかも、それは購入して数年のピカピカのマンションでなくてもよい。

 住宅ジャーナリストの櫻井幸雄氏は「マンションを売却するのは購入から15年目がベスト」とアドバイスする。

 今から15年前の2000年前後といえば、マンションの価格は底値といえるほど、低かった。そのため、今の相場で売り抜ければ、かなりの売却益が見込まれるのだが、櫻井氏が売却を勧める理由は他にも三つある。

 一つ目は、マンションの修繕積立金が15年目を越えたあたりから、突然上がるケースがあるからだ。特に超高層マンションではそれが顕著で、入居時には修繕積立金と管理費は合わせて3万円程度だったものが、16年目には8万円程度にアップすることもあるという。

 さらに、「15年というのは価格の高い設備機器、例えばガス給湯器や浄水器、食器洗い乾燥機などが壊れ始める時期でもある」(櫻井氏)。そのため、このタイミングで数百万円を掛けてリフォームする人も珍しくない。

 修繕積立金の負担増に加えて、設備機器のメンテナンス、リフォームに掛かる費用を考えれば、15年ほどで売ってしまう方が正解とみているのだ。

 そして、三つ目の理由として、買い手側の事情がある。

 所得税や住民税が10年間も減額される住宅ローン減税の対象となる中古マンションは、築後25年目までだ。そのため築15年目で売れば、買い手も住宅ローン減税をフルで活用できるため、購入のインセンティブも働く。

ライフスタイルではなく
相場を読んで売却もアリ

 世間では「不動産は購入するのが得か、賃貸で済ますのが賢いのか」という議論が長年されている。しかし、重要なのは「相場を見る」ことだ。

 2000年に東京都渋谷区に5000万円ほどでマンションを購入した男性は、07年のミニバブル時に7000万円で売り抜けた。その後、妻の実家に住み、子どもが生まれたタイミングで再び不動産を購入したときには、相場は下落していた。

 不動産取引のうまみに味を占めたこの男性は「今、また家を売って相場が下がるまで賃貸に住もうかと考えている」ほどだ。