失敗者のレッテルを恐れず、「新しい失敗をし続ける」ことが成長の糧となる。挫折をバネに成功を呼ぶ3つの秘訣。

 

 失敗がいかに価値あるものか、シリコンバレーでは誰もが頻繁に口にする。失敗談をシェアするイベントも増えている。その1つ、FailConは「起業家たちが自他の失敗から学び、成功に役立てる」ためのカンファレンスだ。その根底にある考え方は、失敗は実践的な学習をもたらす強力な手段であり、適切な方法を取れば、迅速な学びと成長を可能にするということだ。

 しかしスタートアップ界隈での盛り上がりをよそに、失敗には往々にして汚名が付きまとう。挑戦して不成功に終わったということよりも、「失敗者」のレッテルを貼られやすいのだ。最近刊行された拙著のフランス語版の販促ツアーで、私は何十人ものプロフェッショナルたちが嘆くのを聞いた。フランスでは特に、失敗に対して「ワンストライク・アウト」という厳しい見方をされるという。それはヨーロッパに限った話ではなく、失敗は今なお世界中で基本的には許されないものとされている。

 だが実際には、失敗は少数の不運な人々だけが経験する珍しい出来事ではない。自分に正直になってみよう。私たちは失敗を絶え間なく――致命的であることはめったにないとはいえ――犯し続けているのだ。これをお読みのあなたも、先ほど失敗をしてきたか、近い将来に失敗があるだろう。売れない製品を出してしまった、昇進を見送られた、プレゼンでしくじった――理由はさまざまであるにせよ。

 その挫折をバネにして、さらに大きな成功へと転じる秘訣を以下に紹介しよう。

●失敗はイノベーションに不可欠であることを認識する
 戦略論で有名なコロンビア大学ビジネススクール教授、リタ・ギュンター・マグレイスは述べている。競争優位の短命化が進む昨今、企業は自社の標準的なプロセスにイノベーションを組み込まなければ成功できない。しかしいかなるイノベーションにも、新しい物事への挑戦とリスクが伴う以上、失敗は避けて通れない。つまり成功率100%という数字は、「新しいことを一切していない」ことを示しているわけだ。

リーン・スタートアップの提唱者として名高いエリック・リースによれば、目指すべきは「実用最小限の製品」(MVP:Minimum Viable Product)を繰り返しつくっていくことである。素早く失敗して学習せよというこのアプローチは、失敗を意図して製品やサービスをつくるというよりも、一連の試作品を絶え間なく改善していくということだ。