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百田尚樹『殉愛』で考える
「ノンフィクションとは何か」(下)

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第106回】 2015年2月28日
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>>(上)より続く

 正解 → フリージャーナリストを除き、フリーランスで記事を書いている者は好きな名称・肩書きを名乗ってよい。要は名乗ったモン勝ちで、私はジャーナリストだと言い張れば、その人はジャーナリストなのです。

 と言ってしまうと身も蓋もなくなってしまうので、もし、新聞記者さんが「ジャーナリスト」を名乗ったら、それは大いなる過ちで、国際社会で笑われる。何故なら、ジャーナリストというのは「フリーランス」が原則だからだ。

 換言するならば、ジャーナリストとは、体制(政権や組織)に与しない、体制を批判する役割を担っているため、フリーランスという「自由」な立場が求められるのだ。新聞記者さんは「会社員」だから、するとさまざまなしがらみが生じ、批判すべきことも批判できなかったりする。スポンサーとの絡みとかでね。

 また、私たちモノ書きのあいだでジョークのように言われていることだが、ジャーナリスト(Journalist)の「jour」には「その日暮らし」という意味がある。フランス語だ。「list」には「ペン先」の意味があり、だから「ペンを持ったその日暮らしの者」という意味で「ジャーナリスト(フリーランス)」になる。なので、もしブン屋さんが「俺はジャーナリストだ」とか言って威張ってたら笑ってやりましょう。

 ルポライターというのは、鎌田彗氏の『自動車絶望工場 ある季節工の日記』や大熊一夫氏の『ルポ精神病棟』などに代表される、潜入もしくは体験的にその実態を描く手法を取るジャーナリストを言う。鎌田作品も大熊作品も、マスコミで働く者なら何が何でも読んでおかなければならない名作だ。ビジネスジャーナルの記者氏は読んでるのかな。

 ジャーナリストとノンフィクションライターの違いを大雑把に説明すると、これも本人次第で、名乗りたいほうを名乗る。ただ、ジャーナリズムとノンフィクションには大きな違いがあって、ジャーナリズムは「5W1H(When,Where,Who,What,Why,How)」を基本としている。いつ、どこで、誰が、何を、何故、どんなふうにやったか、である。

 そして、文体が硬質で、全体的なトーンが「骨太」なのがジャーナリズムだ。

 わかりやすく言うと、ジャーナリズムはタフガイが描くもので、タフガイは絶対に泣かないのだ。怖れもしない。対して、ノンフィクションとは「五感で書くジャーナリズム」だから、もらい泣きもするし、ある人が飛び降り自殺を図った断崖に立ってみたら、あまりの高さに目がくらみ、恐怖で足が震えてしまった、と書く。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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