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吉田恒のデータが語る為替の法則

今後1~2週間に大量のドル売りの危機!?
ドル高止まりの対円で影響が大きそう

吉田 恒
【第33回】 2009年6月17日
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 例えば、今後1~2週間以内に800億ドル以上のドル売りが出るとしたら、為替市場はどうなってしまうのでしょうか?

 足元の米ドルは、円以外の通貨に対して一段安となる展開になりました。その一因は、上述の影響を先取りしたものだったかもしれません。

 もしそうだとしたら、ある程度まとまった規模のドル売りがこれから実際に出たとしても、円以外の通貨に対するドル下落は限られるということになるのかもしれませんが…。

米ドル vs 主要通貨 日足

 それはともかく、この話の大前提はIMF(国際通貨基金)の動きです。

 IMFは「100年に一度の危機」で拡大する経済混乱に対応するべく、融資枠を大幅に拡大するために、IMF債を発行することを決めました。そのIMF債は、中国などいわゆるBRICs諸国が中心となって購入する見通しです。

 そのために、BRICs諸国は保有しているドル資産を売却する必要があるわけです。

 今のところ、IMF債の購入に手を挙げているのは、中国が500億ドルで、ロシア、ブラジル、インドなどが各100億ドル程度の模様です。BRICs諸国だけでも800億ドルになるわけですから、その資金捻出のためにドル資産を売却したとすると、巨額のドル売りになってしまいます。

 ここで1つポイントになるのは、為替発生のタイミングです。もし、それが「今後1年をかけて」といったようなことならば、大規模なドル売りもかなり分散化され、マーケットに与える影響は限定的となります。

 しかし、IMF債の発行が、1~2週間以内に行われるとの見方が有力のようです。そうであれば、まさに今後1~2週間以内にIMF債購入のための資金を確保する必要があって、すなわち、大量のドル売りが発生することになるわけです。

 この問題は決して先の長い話ではなく、むしろ「今そこにある危機」といったことなのかもしれません。

IMFが画策するドルへの
「ダメージ・コントロール」

 もちろん、IMF債購入資金がすべてドル資産売却で捻出されるとしても、800億ドルのドル売りにはならないようです。IMF債はSDR建て(※)であり、そのSDRは複数の通貨で構成されています。

 具体的には米ドルが44%、ユーロが34%、円が11%といった割合です。その意味では、800億ドルのすべてをドルからSDR建てのIMF債に乗り換えるとしても、ドル売りは450億ドル弱といった計算になります。

 ただ、800億ドルではなく、400億ドル超ということでも、やはり相当なドル売り圧力であることに変わりありません。

 BRICsなど外国政府の保有しているドル資産は、基本的に米国債が中心です。従って、そのようなまとまった規模の米国債売却が発生するといった見通しの中で、この間の米国債価格が急落し、利回りは4%まで急騰して、そしてドルも円以外の通貨に対して一段安になった、ということなのかもしれません。

(※編集部注:「SDR」は、IMFの特別引出権のことで、元々は国際的な流動性不足に対応するための金、ドルなど準備資産を補完する目的で登場した。第3の世界貨幣を目ざしているもの、現状は創出額の規模が小さい)

 しかし、果たして、本当に400億ドルもの米国債売却となるのでしょうか?

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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