質問4:いま興味をお持ちのテーマはどんなものですか。

 連載が始まっているものでいえば、ひとつは『オペレーションZ』(「新潮45」)で書いている国家予算の歳出を半分にするというアイデアと、もうひとつ『バラ色の未来』(「小説宝石」)で書いているカジノが地方をほろぼすというテーマがあります。

 それ以外にも、大きくふたつあります。ひとつは、日本はもう少しアジアと仲良くすべきなんじゃないかということ。隣人ほど大切なものはないわけで、日本は引っ越せないんですから。アジアの民族としてちゃんと理解し合うことをテーマに小説にできないかなと考えて取材を始めています。もうひとつは、戦前の昭和史です。なぜ日本は戦争を始め、自分たちで戦争をコントロールできないまま負けたのかを、しっかり勉強したうえで小説にしたいと思っています。

 いまの日本で歴史観に関して蔓延しているムードは非常にまずい。歴史観というのは、権力者が作るものですから実は適当です。いい加減な主張をしている権力者はそのうち消えていくかもしれないけど、彼らが無責任に発した歴史観は残ってしまいます。反論するにはきちんとした歴史を知らなければいけない。まずは5年がかりで勉強して、そこから小説にしていきたいと考えています。

 それに、貧しくなってくると人のせいにしたくなるのが人間の常で、すぐにアジア人をバッシングしたがる日本もそういう情けない状態なんだと思います。そこを見直すきっかけ作りといいますか、小説の役割としてそこを担っていきたいです。

質問5:真山さんの作品は“予言”とも思えるテーマが多いですが、なんで先が見えるんですか?

 それは、うちに水晶玉があって念を込めると3年先ぐらいは見える…だったらいいんですが(笑)。

 たとえば『虚像(メディア)の砦』(講談社文庫)では、イラクでの日本人誘拐をベースに、テレビが感情を誘導する政府の道具として使われていることを描いたら、本当にイスラム国がでてきて。作中のイスラム国は“国家”であるという違いはありますけど。中国で起こる原発事故を描いた『ベイジン』(幻冬舎文庫)や地熱発電ビジネスの裏側を描いた『マグマ』(角川文庫)も、3.11前に書いたことを驚かれます。なんで将来起こる問題が見えたのか聞かれますが、一番あり得ないことを小説に書いていくと、本当に起こるんです。

 つまり“想定外”というのはウソで、その人の想像力が足りないだけですよね。世の中に起きていることから想像力を膨らませていくと、どなたにでも想像できることがあって、これを放っておくとこんなことが起きるかも…と考えていくと、「起きるわけない」という“安心”を疑えるようになります。そうすると社会は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。私はそういう想像力が少しだけあるのと、それを周囲に説得することが好きなんだと思います。

※トークショーの内容を抄録として、読みやすいよう編集した記事です