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岸博幸のクリエイティブ国富論

楽天・TBS攻防戦の終結が示す真の教訓とネット広告モデルの壁

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第34回】 2009年4月3日
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 楽天とTBSの経営統合を巡る3年半に渡る攻防が、楽天の保有するTBS株売却という形で終結しました。報道では「通信と放送の融合という理念だけが先行」、「楽天敗れる」といったトーンが多かったですが、ちょっと違うような気がします。問題の本質は別のところにあるのではないでしょうか。

“融合は儲からない”という現実

 もちろん、物別れに終わった原因として、TBS側に“ネット企業に統合されるのはイヤだ”という感情的な部分も多少はあったのかもしれません。しかし、それよりも統合を妨げた本質的原因は、“融合はまだ儲からない”、正確には“放送局がインターネット(以下「ネット」と略します)を活用して収益を上げるビジネスモデルはまだ確立されていない”というのが現実だったのではないでしょうか。

 融合の具体例として一般的なのは、放送局がテレビ番組をネットでも配信することです。実際、米国では人気番組がほとんどすべてネットや携帯を通じて見られるようになっています。しかし、その大半がテレビ放送と同じ広告モデルを採用しているのですが、ネット経由の配信で十分な広告収入を稼いでいるところは皆無です。

 例えば、4大ネットワーク局のNBCとフォックスは共同で、テレビ番組のネット配信を行う「Hulu」を立ち上げました。今や「Hulu」はテレビ番組の配信サイトとしては米国で一番有名ですが、それでも昨年一年間の広告収入は7千万ドル(推定)でした。

 大きな数字に見えるかもしれませんね。でも、NBCユニバーサルの年間収入170億ドルの僅か0.4%に過ぎないのです。この事実が示すように、融合先進国の米国でさえも放送局のネット活用はまだ試行錯誤の段階であり、まだ収益モデルは確立されていないのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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