まず手を付けたのは、当初若手の間で目立っていた「評論家」的なものの見方を改めさせることだった。津谷会長は「自分の担当サイトでありながら、単に問題点を指摘するだけにとどまっている内容が目立ちました。それに対して『我々は評論家じゃない。どうするのかを具体的に言ってくれ』と叱ることを繰り返し、若手の価値観を変えていきました」と語る。

 また提案に対する幹部のコメントについても、方針を定めることで課題解決のプロセスを明確に示すことにした。コメント方針は以下の4項目からなる。

(1)強制的アドバイスは、最小限にとどめる。最終決定は、本人とそのマネジャーに任せる。
(2)時折、問題解決の高度・新鮮なアプローチ手法を示す。(例:良い方法には、「記憶に残る方法名、本質を現した方法名」を名づけよ、と指示するなど)。
(3)いちコンテンツ担当ではなく、全社視点での判断を示す。
(4)直属の上司ではない、他部署のマネジャがコメントする。

提案会では若手の提案愛用に対して幹部が鋭い質問を浴びせる(写真提供:ボルテージ)

 課題そのもののとらえ方も、社員が考えているものより「小さく分解」させるようにした。消費者の購買行動を考えた5つの大分類と16の中分類に分けて、アクセス数や利用率、初回購入率などのKPI(重要指標)を課題の発生ポイントごとに測り、改善させるようにした。

 このような仕組みのもと、前のページで紹介した発表形式を用いることで、社員にプレッシャーを与え、発表に向けとことん考え抜くことで「発表者」として鍛えられていく。これを繰り返すことにより、社員の自律を促し、よい循環が生まれた。

 提案会によるメリットは大きく3つだ。

(1)一人ひとりが、「自分の頭で考え・行動する」ようになった。
(2)仕事に対する「真剣度が段違い」になった。
(3)仕事に「リズム感」が生まれた。

 ボルテージでは、この「提案会」をコンテンツ制作や集客のみならず、システム開発や管理部門などにも応用していった。

「新人であっても、9ヵ月も経れば一様に、改善点の要点を端的に短時間で説明できるようになってきます。面白いことに、僕の見る限り、仕事の成果と発表の得点は見事に比例していますね。社員にとってこの「提案会」は、常にアウトプットと成果を求められる厳しいものです。残念ながら初期には、「自分の頭で考える」という負荷に耐えられず辞めていく者もいました。ただ、全社員がその努力を積み重ねていくことで、売上100億円を達成できたのだと確信しています」(津谷会長)