社員の目の色が変わってくる

 実は、「提案会」の導入は、広告会社勤務時代や映画作りの経験をベースにしたものだった。

「僕が広告会社時代にテンションが上がった経験を振り返ると、やはりプレゼンでした。プレゼンの日に向けてアイディアを出し、説得のロジックを練りながらポスターや展示物の見本を制作していく。

 そして、当日は徹夜明けでもスタッフ全員がスーツを着込んで待合室に勢揃いし、クライアント(広告主)を前にしてわずか15分程度の時間で自分たちのプランについて発表する。その後は誰もがすっきりとした気分でコーヒーでも飲みに行くわけですが、こうした“ハレの場”が月に2~3回ありました。だから、同じようなことをボルテージでもやってみようと思ったのです」(津谷会長)

 津谷会長の思惑どおり、提案会を開くようになってから若手社員の目の色が変わったという。同僚たちの前で間抜けなプランを発表するわけにはいかないし、どれだけ良案に思われても翌週には結果が出てしまうからだ。

「若手たちの真剣度が増しましたね。『大勢の前で恥をかきたくない』というのが日本人には一番刺激になるのでしょうか。やはり、恥の文化の国なのかも? それに、広告会社時代は請負業態なので、プレゼンの日や広告物の納期に向けて仕事を進めていました。

『「胸キュン」で100億円』(KADOKAWA)価格1300円で発売中

 ところが、自主メーカーになるとそういった外部要素がなく、自己都合で締め切りを決められます。『自主メーカーとして、どうすれば上手く波をつくれるのか?』との問いに対する答えも提案会にありました。提案会に向けて、締め切り前の焦燥感や締め切り後の安堵感といった波が生じるようになり、よい調子で仕事が回り始めました」(津谷会長)

「提案会」や整備された各種フォーマットの効用について、まだまだここでは語りきれない。詳しく知りたい人は、本屋の店頭に並んでいる「『胸キュン』で100億円」という書籍を手にとってみるといい。津谷会長が起業するに至った経緯や、成功のステージを駆け上がるまでの紆余曲折、その経緯や同社のコア(核心)である「胸キュン」必至の「フォーマット」の概要などについて紹介したものだ。