いわゆる「残業代ゼロ法案」が国会で審議され注目されている。しかし、労働者の過長労働と待遇にのみフォーカスされ過ぎており、本来最も注視すべき、労働者の働く意欲を向上させる観点が、抜け落ちていないだろうか。労働者の働く意欲にフォーカスすると、残業代ゼロ法案に年収制限は不要ではないだろうか。

年収1075万円以上が対象の
「残業代ゼロ法案」は論点がずれている

「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるため」という前置きで、年収1075万円以上の労働者を、時間外・休日労働協定や割増賃金支払の適用除外とする、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)が、今国会で審議されている。

 メディアでは「残業代ゼロ法案」の通称が定着しつつあり、「どれだけ働いても残業代が支払われない」「残業代削減のための、経営者に有利な法改正だ」というネガティブ面のみが強調されているように思える。

 対象となるのは年収1075万円以上のいわゆるホワイトカラー労働者であり、その割合は給与所得者全体の3.8%に過ぎないが、この年収制限が今後、撤廃されていくのではないかと危惧を持つ人が多いために、注目を集めているのだろう。

 しかし私は、この問題が、労働者の過長労働と待遇の側面にのみフォーカスされ過ぎており、本来であれば避けては通れないどころか、むしろ核となる問題である、労働者の働く意欲を向上させる観点が抜け落ちていることに、違和感を覚えざるを得ない。

 そして、労働者の働く意欲を向上させることは、どの年収層においても共通の課題であるので、いわゆる「残業代ゼロ法案」は、年収制限を外して議論すべきではないだろうかと思えてならない。