解決策は1つでなく
3つ考えさせる

「それに続くのは、解決策の策定というステップ。新人のうちは1つでも思いつくとそれで満足しがちですが、『ちょっと待て、あと2つ考えてほしい』と突き返すようにしています。怪訝な顔をされがちですが、1つ浮かべば、3つ考えることはさほど難しくない。そのうえで、3つの案を比較検討するのが次なるステップ。ここで大切なのは、効果のみならずコストも踏まえて評価すること。

3つの解決策を検討する際に用いるチャートの例

 さらに、「将来的な変化に対応可能か?」といった時間面や、「他コンテンツへの展開が可能か?」などといったエリア面での拡張性を吟味します。それぞれの項目ごとにシンプルな数値や○×△で書き表し、一目で客観的に評価できることが重要です。最終的に3案のいずれを選ぶのかについては、総合点もしくは最高点という2つの方法があります。とかく総合点で選ぶと、どの項目もあと一歩といった中途半端な案になりやすい。その点、最高点方式だとエッジの効いた案で成否がはっきりすることが多いようです」(津谷会長)

 こうした一連の検討について紙面を2分割してまとめ、大きな1つの矢印で結んだのものが「A→B」形式の企画書なのである。

『「胸キュン」で100億円』(KADOKAWA)価格1300円で発売中

 さらに津谷会長は、経験値ゼロの新入社員であってもヒット確実の恋愛ゲームを作り出せる「フォーマット(仕組み)」を構築。瞬く間にボルテージは年商100億円を稼ぎ出す企業へと成長し、2011年には東証一部市場への上場も果たした。

 津谷会長が起業するに至った経緯や、成功のステージを駆け上がるまでの紆余曲折、その経緯や同社のコア(核心)である「胸キュン」必至の「フォーマット」の概要などについて紹介した書籍こそ、巷で大いに話題を集めている『「胸キュン」で100億円』だ。もっと詳しく知りたい人は、同書を手にとって読み進んでいただきたい。

世界進出はM&Aでなく
米国に拠点を立ち上げる

 ボルテージのストーリーには、さらにその続きがある。モバイル恋愛ゲーム会社として頂点に立った同社は、新たに海外市場へと照準を合わせた。もっとも、それはかなりの冒険だったとも言える。

 すでに台湾やシンガポールを中心とするアジア市場に向けて既存のコンテンツを英語に翻訳したバージョンを投入し、相応のヒット作も生まれていた。だが、津谷会長がフォーカスを当てたのは、エンターテインメント大国である一方で、アジアとはカルチャーが大きく異なる米国市場だったのである。

「アジアの人々は日本のアニメを見慣れていて、日本と同じイラストを用いたコンテンツでもすんなりと受け入れられることがわかりました。ところが、米国では通用しないのです。米国人が求めているのはもっとリアルタッチのもので、日本のアニメのような絵は幼稚に感じるようです」(津谷会長)