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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

「ロボット=鉄腕アトム」の固定概念が
技術開発の邪魔になる

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第10回】 2015年3月16日
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 でも、多くの米国人は、ロボットと聞いて、具体的な人型ロボットをイメージすることはありません。私もそうです。ロボットとは、ソフトウェアからできたシステムだと考えるからです。

 私が危惧しているのは、日本におけるロボット開発において、「ロボットは人型をしているべき」という思い込みがハンディにならないかということです。

 もちろん、人の格好をしていたほうが親しみやすいし、生活に馴染みやすいかもしれません。でも、完ぺきなパートナーとして働くヒューマノイドを完成させるにはまだまだ時間がかかるでしょう。そうではなく、人型ということにこだわらず、今使える技術をシステム化して何ができるのかを思考することが重要なのです。

飛行機をアームで操縦しようとする日本
脳波で操縦しようとする米国

 わかりやすい例を挙げてみましょう。

 飛行機を自動操縦するにはどうすればいいかを考えるとき、日本人は往々にして、アームのような機械で操縦桿を緻密に操作するメカトロニクスの技術を追求しようとします。つまり、まず腕を作り、その腕が操縦して飛行機を飛ばすという発想です。

 一方、米国のベンチャー企業は、センサーがいくつも付いたキャップのようなものを人の頭にかぶせ、脳波(思考力)で直接、飛行機を飛ばすシステムを開発しています。

 その脳波をF-35戦闘機のシミュレーターにつないだ実験を行った結果、操縦桿を動かすだけでなく、機体の角度までコントロールできたそうです。

 戦闘機専門のパイロットが最新型のF-35の操縦を習得するのには、およそ半年かかるのですが、この装置ではわずか4時間で飛ばせるようになったといいます。これはちょっとスゴイと思いませんか。

 要するに私が言いたいのは、固定概念が邪魔すると、本来の目的を見失ってしまうということ。操縦する腕を作ること自体が目的になってしまい、飛行機を飛ばすところまで行き着かないのではないか、ということです。

 海外のベンチャー企業では、飛行機の操縦と同じように脳波(思考力)で文字を書く実験も行っていて、キーボードを打つよりも格段に早く文字を入力することができるそうです。残念ながら、こうした柔軟な発想という部分では、日本はワンサイクル、ワンフェーズが遅れているという印象です。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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