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ムダな投資を避けて仕組みや運用方法に工夫を
成長か継続か―中堅企業のIT経営学(3)

上村孝樹 [ジャーナリスト/コンサルタント]
2009年12月1日
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 非成長経済下で中堅企業が目指すべき目標は、ビジネスの継続性の確保だ。そのためには、自立した経営と、独自性を付加価値として顧客に提供するビジネスモデル、人とシステムが連携するマネジメントモデルが求められる。そのなかで、ITはどのような役割を果たすべきなのだろうか。

 企業は顧客を自ら探し出し、市場を開拓していく必要があるが、インターネットによって商圏が飛躍的に拡大し、全国規模で顧客にリーチできるようになった。ヘルプデスクやコールセンターは、開拓した顧客の満足度を高め、つなぎ止めるのに重要な役割を担う。

 このためIT投資の主役は、営業やマーケティングといった市場との接点であるフロント側にあると考えがちだ。しかし一方で、見積もりの提出や納期の回答など、顧客の求めに応じた迅速な対応も要求される。つまり、フロント側の進化に伴って、CRMと在庫管理システムなど後方業務にかかわるシステムの整備や連携も、より重要になっているのである。

 ただ、すべてのシステムをオーダーメードで構築する必要はない。ムダな投資をしないためにも、パッケージ化されたシステムや、利用できる標準的プロセスを使うほうが賢明だ。ITを使いこなすうえでまず考えなければならないことは、SFAやCRMならデータの入力頻度を上げることであり、データが発生した時点ですぐに入力できる仕組みをつくることだ。システムやデータの運用方法を工夫することこそがIT経営のカギとなる。

ビジネスのIT化は
再構築の手段でしかない

 共通のプラットフォームを使いながら、使い方や運用次第で生み出せる付加価値を考え、それで足りなければカスタマイズや新たなシステムの構築を行なっていけばよい。企業戦略をITによって具現化するためには、どのようにデータを扱えば付加価値を生み出せるか、どのようなデータを連携させておくべきかといったことを研究しておく必要があるだろう。

 また、自社の付加価値を認めてくれる“よいお客様”に対して、短期間で付加価値を浸透させるのは難しいということも肝に銘じておくべきだ。新規の顧客を一気に獲得しようとするのも、中堅企業にとって負荷が大き過ぎる。5年程度の中長期計画を立案し、段階を踏んで進めていくことを勧めたい。そのうえで、具体的な実行計画を用意して実践すべきである。

 ITは、非成長経済の時代に合わせ、既存事業を再構築するために非常に有効だ。しかしここまで説明してきたように、ビジネスのIT化がすなわち経営革新の答えとなるわけではない。あくまでも、既存事業のビジネスモデルを、非成長経済に合わせたかたちに再構築する手段でしかない。経営者には、自社の向かうべき方向性を見つけ出し、そこへ向かうためにITを上手に使いこなすことが求められているのである。

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上村孝樹 [ジャーナリスト/コンサルタント]

「日経情報ストラテジー」「日経アドバンテージ」(ともに日経BP社)などの編集長を経て2005年に独立してフリーに。経済産業省IT経営応援隊「IT経営百選」選考委員会委員長などを歴任。事業創造大学院大学の客員教授も務める。


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