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3月11日 18時0分
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【準・緊急レポート】記憶力の欠如 - 何が変わったのか - 広木隆「ストラテジーレポート」

結婚は判断力の欠如、離婚は忍耐力の欠如、再婚は記憶力の欠如
(アルマン・サラクルー:フランスの劇作家)

この商売をやっているとクレームはつきものだが、相場が上がっている時はクレームは少ない。反対に、相場が下げるとクレームが多くなる。個人投資家の多くは、買いから入る。売りから入るひとは少ない。従って、基本的に相場上昇時には儲かり、相場下落時には損をする。儲かれば自分の投資判断が良かったと納得する。損をすると腹が立つから誰かのせいにしたくなる。「お前が買いだというから買ったら下がってしまったじゃないか!」「お前が2万円までいくなんていうから信じたのに!」「どうしてくれるんだ!」というわけである。儲かれば自分の手柄、損すればストラテジストのせいだ。

だからストラテジストは、相場が上がっている時は昼寝でもしていればいい。何もしなくても怒られない。相場が下がったときは - さて、何をするか?言い訳をするひともいるだろう。口を閉ざすひともいるかもしれない。僕は、いつも、相場が下がった時こそ買いを勧めてきた。よって、今日もそういうレポートを書く。但し、この程度でいちいち【緊急レポート】と銘打っていては、1年に何回も【緊急レポート】を発動しなければならない。この程度の下げはザラで、別にどうってことはないのだ。【準】の意味はそういうことだ。

ロジック(論理)は2か月前の【緊急レポート】「センチメントとファンダメンタルズ」で述べたこととまったく同一である。

<ファンダメンタルズが相場のトレンドを規定する。ファンダメンタルズはトレンドの底流をなすものだ。株価はファンダメンタルズで決まる。但し、ファンダメンタルズのまわりを常に揺れ動く。トレーダーはその揺らぎを捉えようとする。そうしたトレーダーたちの行動で、相場の振幅がアンプリファイ(増幅)される>

2か月前、市場のセンチメントを悪化させたのは原油価格の急落とギリシャ不安であった。今回は円安の進行が材料視されているが、なんとも奇異な話ではないか。あれほど円安が株価上昇の要因とされてきたのに、今になって急に円安の悪い面にフォーカスを当てる根拠は何か。具体的に言えば、日経平均が1万9000円目前まで迫った先週金曜日にドル円は120円絡みの水準だった。日本時間のその夜、強い雇用統計の結果を受けてNY市場でドルは急伸しそこから上昇に弾みがついて昨日は一時122円をつけた。120円ならばよくて、122円ではいけないのか。以前から言っていることだが、円安には良い面と悪い面がある。円高にも良い面と悪い面とがあったように。円安進行で日本株が売られるというのは、まったく道理にかなわない。もっともバカバカしい理屈は、「円相場が下落すれば日本株はドル換算で減価するため外国人投資家がドル建て日経平均の評価益減少を嫌気して売っている」というものだ。少し前にはドル建て日経平均が上昇したから外国人の買いに勢いがついたという説が目についた。ドル建ての日経平均は150ドルの壁を乗り越えられずにきたが、ここにきて150ドル台が定着してきた。さらに上抜けして完全に壁を打破できるかに注目が集まっているのだという。

いつか言おう、言おうと思っていたが、「ドル建ての日経平均」などというものはない。



考えても見給え。あなたが米国株投資をする際、NYダウ平均を円建てに換算して見ているか?円建てのNYダウ平均なんて聞いたこともない。それと同じ理屈である。

もちろんドルをベースカレンシーとする外国人投資家は、為替のリターン込みのトータル・リターンを考慮して海外投資をおこなう。当たり前である。株は現地通貨で見る。それに為替の動向を別途考える。そうでなければ見誤る。簡単な例を考えればいかにドル建ての日経平均というものがバカバカしいかすぐわかる。

日経平均が1万5000円から1万8000円に上昇した。ドル円は1ドル100円から120円に円安になった。ドル建ての日経平均は、1万5000円÷100円=150ドル、1万8000円÷120円=150ドルで変わらない。ではドル建ての日経平均を見ている外国人の目には日本株はまったく上がっていないと映るのか?そんなことはあるはずがないだろう。

投資のトータル・リターンを考えるということと、現地通貨建ての株価評価というのはまったく別物である。

先進的な外国の年金基金では、株式の運用マネージャーにはあくまで株のベンチマークに勝つことを求めたうえで、為替についてはオーバーレイ・マネージャーを雇って通貨アロケーションを別建てで管理しているところもある。資産クラスとしての株式の魅力度と通貨配分の判断を分けておこなうということである。

今回の円安進行がリスク要因と捉えられている、もっとも合理的な解釈は、米国にとってのドル独歩高という悪材料である。ドル高が米国の企業収益の重石となり始めている。これは利上げ前夜の米国株式市場にとって最大のリスク要因である。しかし、それにしたって、「何をいまさら」という感は否めない。今に始まったことではないだろう。

と、ここまで本日(3月11日)の寄り付き前に書いて、始まった相場を見た。日経平均は60円安で寄り付いたあと下げ幅を縮めている。ああ、これはプラス転換するな、と感じた。NYが300ドル超の、今年最大の下落となっても日本株は下げない。昨日、すでに下げていたから、という面もあるが、週末にメジャーSQを控えていることは変わらない。今日は最終売買日の前日で相場が荒れやすい日でもある。外国人の先物ポジションも積み上がったままだ。それでも下げない。NYの今年最大の下げを受けて、【準・緊急レポート】を用意したが、梯子を外された感じである。

相場は、さすがに記憶力がついてきたようだ。これこそ、【準・緊急】でお伝えしたいことである、としておこう。相場は、押し目買いで報われることがわかってきた。足元よりも先行きの改善に目が向くようになってきた。それは、つまり、この先にもう大きな押し目はあまりない、ということである。

もうひとつ、昨今の相場で指摘しておきたい点は国債市場がほぼ完全に崩れているということである。これはマネーの行き場が、いよいよなくなってきたことを示すもので、株式市場にとっての好材料である。昨日は一時的に株安・円安・債券安の「トリプル安」だった。円と日本国債が売られる中で、株だけが堅調となれば、それは悪い円安、悪い金利上昇ではないという証となる。ここはよく目を凝らしてマーケットを俯瞰する局面である。






(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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