ニューヨークダウは7月23日に9000ドル台を回復。8月12日には一時9400ドル台を付けた。FT100指数も8月13日には年初来高値を更新した。

 そのリード役を果たしているのが銀行株だ。S&P金融株指数は8月18日までの1ヵ月で1割弱上昇している。

 しかし、欧米主要金融機関の決算を見る限り、景気と株価の先行きは暗いと言わざるをえない。

 トレーディング収益や株式や社債の引受業務の好調で、主要金融機関の多くは黒字決算となった。JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、ドイツ銀行、BNPパリバの第2四半期決算はいずれも二期連続の黒字を計上した。

 しかし、内容を見ていくと第1四半期同様、景気後退下で不良債権に侵食される現状が浮かぶ。

 シティグループは、モルガン・スタンレーに売却したスミスバーニー証券の売却益110億7800万ドルの計上など特殊要因がなければ、最終赤字だった。不良債権比率も前期の3.97%から4.40%に急上昇している。

 バンク・オブ・アメリカも中国建設銀行株売却益53億ドルなど特殊要因を除くと「税前利益で5億ドル前後の赤字」(中川隆・大和証券SMBC金融市場調査部次長)となった。貸倒引当金残高の不良債権に対するカバー率は113%から109%に低下しており、引当金を十分に積み切れていない現状が浮かび上がる。

 不良債権に蝕まれている惨状は欧州の金融機関も同様だ。「今年に入って不良債権が急増している」(藤岡宏明・大和証券SMBC金融市場調査部次長)のである。

 バークレイズの2009年1~6月期の減損費用(貸倒償却額と貸倒引当金繰入額の合計)は前期比53.3%増の45億5600万ドルにふくらんだ。BNPパリバの09年第2四半期の信用コストも前期比28.4%増の23億4500万ドルに増大している。

 8月7日に発表された米国の非農業部門の雇用者数は前月比25万人減少。減少幅縮小は株式市場を活気づけた。だが、減少が続いていることに変わりはない。景気低迷は続き、「今後も不良債権拡大が続く」(石原哲夫・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)のは避けられない。現にJPモルガンは、決算発表の席上で、今後のプライム、サブプライムの信用コストの見通しを引き上げた。また、7月以降、毎週末地方銀行が破綻しその数は32に上る。

 こうしためじろ押しの悪材料を「市場は無視している」(中空麻奈・BNPパリバ証券東京支店クレジット調査部長)のが現状だ。

 株価が回復に向かった七月初旬以降、経済のファンダメンタルズとの歪みはひどくなる一方だ。経済の急回復が見込めない以上、株価下落によって歪みが解消される日はそう遠くないだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)

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