経営 X 人事
中原淳の学びは現場にあり!
【第6回】 2015年3月18日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授],井上佐保子

自信のない若手を変える「全員主役」作戦とは
日本一“人が育つ”予約殺到料理店
 検証現場⇒日本料理店「六雁」【後編】

 上下関係の厳しい和食の世界。見習い中の新人たちは『坊主、あひる、追い回し』などと呼ばれ、まず人間扱いされないといいます。この育成法に真っ向から異議を唱えたのが銀座「六雁」のディレクター榎園豊治さん。なんと彼は和食料理店には珍しい「オープンキッチン」を取り入れ、若手をはじめ料理人たちの仕事をお客様の視線にさらすことにしたのです。一人ひとりを主役にする教育法は成功するのでしょうか?そして、お店の経営は成り立つのでしょうか――。

〔写真/真嶋和隆〕

オープンキッチンは料理人たちの舞台

 開店後1年ほどは、ほとんど客が訪れず、料理を教えたり、ミーティングをしたりしては夢を語る日々。

 「お客様もいないのに『いつか百貨店からおせちの依頼が来るから』『いつか企業の人が、人材育成の参考に見学に来るから』『スペインの世界料理学会からオファーが』なんて予言をしていました」と、榎園さんは笑いますが、徐々に客足が伸び、ほとんどの予言は現実になっているといいます。

 「みんなリーダーの背中を見ているんです。だから、なにもすごいことをする必要はなく、『この人についていくと面白いことがあるかも』というだけでいいんです。そして、頑張れば夢は叶うのかも……という雰囲気が出てきたらしめたものです」

 榎園さんの情熱とリーダーシップが、若い料理人たちの成長のバックボーンになっていることは確かですが、もう1つ、期せずして料理人たちの成長に大きく貢献したものがあります。それは、店の中央に位置するフルオープンキッチンです。

 オープンキッチンには、常に見られているという緊張感があります。料理の手際はもちろん、会話や立ち居振る舞い全てが客の目、そして同僚の目にさらされています。

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中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 

井上佐保子(いのうえ・さおこ)

1972年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。通信社、出版社勤務を経て、2006年にフリーランスライターとして独立。企業の人材育成、人材マネジメント、キャリアなどをテーマとして、企業事例、インタビュー記事などを執筆。人事・人材育成分野の書籍ライティングも手がけている。


中原淳の学びは現場にあり!

このコーナーでは、毎回、“学びに満ちた仕事の現場”を訪問し、WorkplaceLearning(職場の学び)の観点から、検証していきます。日頃はあまり目にすることのないさまざまな職種の「現場」。そこでは、どのような仕事がなされ、人はどのようにして知識やスキルを学び、育っているのでしょうか。企業の人材育成では見落とされがちな「学びのスイッチ」を掘り当てます。

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