すべての業務に関与して、社長自らが引っ張っていこうという姿勢は、個人事業もしくは従業員10人未満の小さな会社でやる分には何ら問題はありません。むしろ、社長個人の能力や情熱が推進力となり、事業が効率的に動いていく可能性は高いと言えます。

 しかし、それなりの規模の組織で大きな仕事をしていこうとするときは、社長が前に出すぎることはたいていマイナスに作用します。

 なぜなら、動きすぎる社長の下では「ヒトが育たない」からです。

動きすぎる社長が会社を潰す

 一般に会社経営に不可欠な資源として、「ヒト、モノ、カネ」の3つが挙げられます。

 しかし、私の考えは違います。モノを生み出すのもヒト。カネを増やすのもヒト。つまり、会社を動かすのは「ヒト、ヒト、ヒト」であり、会社を生かすも殺すも「ヒトと組織次第」なのです。

 動きすぎる社長の下では、経営のもっとも重要な資源である「ヒト」、つまり社員は育ちません。これは、これまでの経営者やアドバイザーとしての経験を通じて得た、私の結論です。そして、社員が育たなければ、会社の事業がうまくいくはずもありません。

 たとえば、社長がすべての案件に口を出し、細部にわたって指示を出してきたらどうでしょうか。

 社長自身はそれで満足かもしれませんが、そんな仕事に社員の納得感や達成感はありません。やがて社員たちは仕事へのヤル気を失い、会社を去っていくか、社長の指示どおりに惰性で仕事をこなすようになります。結果、その会社の経営は停滞するか、傾いていきます。

 そう、まさに「動きすぎる社長が会社を潰す」のです。