ベトナム 2015年3月19日

ベトナム人にとってテト(旧正月)は
家族が集まる1年でいちばん大切なとき

日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安さん。2月はベトナムの旧正月。以前に中安さん本人がベトナム人の家族愛を痛感したエピソードを交えて、ベトナム人にとっての家族をレポートします。かつての日本のお正月を思い出す方も多いのでは?

正月休みに家族が一人欠けるだけで、1週間、病気で寝込む

 旧暦で新年を祝うベトナムでは、今年は新暦の2月19日が正月だった。テトと呼ばれるベトナム正月が、ベトナム人にとってどれほど大きな存在か、それは日本人である私の想像をはるかに超える。そしてテトとは何かと聞かれたら、私は「家族が集まる機会」だと答える。

 テトから1月ほど過ぎてしまったが、私が「ベトナム人にとってテトがどんなに大切か」を実感した体験談を紹介したいと思う。

 結婚してから日本に住んでいた私たちが、結婚後、最初のテトを迎える前のことである。既に妻の兄の結婚式のために、半年ほど前に帰省したばかりだったので、「今年のテトは、ベトナムに帰らず日本で過ごす」と妻の実家に連絡をした。

 それから数日後、実家の義兄から連絡が入った。「お母さんが倒れた」というのである。

 義母は「娘は、普段は離ればなれで暮らしているけれど、家族全員が集まるテトにはゆっくりと帰省をするに違いない」と信じて疑わなかったらしい。ところが、我々が帰省しないと聞いて、ショックで寝込んでしまったというのだ。「寝たきりで食事も喉を通らない」という状態が、確か数日間は続いたと記憶している。

テト前にはショッピングセンターに、テト用品を売る特設コーナーができる。これはイオンモール2号店で見かけたもの【撮影/中安昭人】
年末になると、写真のような「お歳暮セット」を持って挨拶回りをする。個人宅に贈ることはあまりなく、主に会社用【撮影/中安昭人】

実家への国際電話料金が10万円を超す月も

 実はそれまでにも「予兆」はあった。我々夫婦が日本での生活を始めたばかりの頃である。実家の母親から届いたメールを読んでいた妻が目を真っ赤にして、ポロポロと涙を流しだした。

 驚いて「何か実家で一大事でも」と尋ねてみると、メールの文面を紹介してくれた。曰く、
「家族が一つ屋根の下で一緒に暮らすという、こんな当たり前の希望すら叶わないなんて、自分は何て不幸なのだろう」
「娘と一緒に暮らせないなんて、自分の今までの人生は何だったのかと空しくなった」
というような内容が、せつせつと書かれているという。

 これが頻繁に届くのだ。そのたびに同じような愁嘆場が繰り返される。

 義母はパソコンを持っていない。どうするかというと、近所のインターネット屋さんに行って、そこでメールを書いて送るのである。バイクに乗れず、膝が悪くて長い距離を歩けない義母が、足の痛みと闘いながら、インターネット屋さんまで通う姿を想像すると、私としても心が痛んでしまう。妻には、
「国際電話料金のことは気にしなくていいから、実家のお母さんに遠慮なく電話してあげて」
と言ってあった。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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