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スマートフォンの理想と現実

世界的なスマホ販売不振を経たサムスンの成熟

モバイルワールドコングレス2015レポート(上)

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第65回】 2015年3月20日
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〈ただ、昨年のMWC2013あたりから、彼らに「悩み」を感じていた。ブースの様子を見るだけでも、「なんでもできるけど、なにをしたいのかわからない」というような、全体に総花的な展示であった。言葉を選ばずに言えば、元気だった頃のNTTドコモが日本国内の展示会に出展したときは、こんな感じだったかな、という印象である。〉

 今年のサムスンも、展示やイベントの規模はそのままである。アンドロイド勢の筆頭事業者であり、世界的に責任を負っていることに変わりはないからだ。ただ昨年に比べて、事業者として説明したいことが明確になっており、そのメッセージもとても分かりやすいものになっていた。まるで憑き物が取れて、地に足の着いたような印象である。

 おそらく、世界的な販売不振に見舞われたことで、スマートフォンがすでにコモディティになっていることを、彼らなりに受け止めたのではないだろうか。また、アップルがSoCの生産をサムスンからTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)に切り替えたことで、彼らの部材の調達状況、生産設備の稼働状況が大きく変わり、戦略的なリポジショニングやエコシステムの変更を迫られたことは、容易に想像がつく。

 そうした中で、市場に対する責任を果たそうとした時、ウェアラブルや関連サービスといった「周辺領域」への事業拡大ではなく、本丸であるスマートフォンへの回帰とそれによる洗練に進んだのかもしれない。

 もちろん、競争は厳しい。そしてサムスンの背負う課題は、そう簡単に解決できるものでもない。しかし彼らのターンアラウンドが成功するのだとしたら、これも日本市場にとっては大きなインパクトとなるだろう。

 なにしろ現在、日本のスマートフォンは、「iPhone対その他」という状況であり、その他部分を事業者同士でつぶし合っている。しかしそうした小規模な消耗戦の中で、体力の消耗が相対的に小さく、またそもそもの製品の潜在能力が高いのは誰かと問われれば、やはりサムスンの名を挙げないわけにはいかない。

 これも次回以降に触れるが、日本のアンドロイドを牽引してきたソニーのXperiaの失速が、MWCでも目立った。だとすると彼らの占めていたメジャーポジションは、今後ゆるやかにサムスンが獲得していくことになるのかもしれない。

MWCとリンクする日本市場

 このように、MWCと日本市場の距離感は、これまで以上に近づいてきた。より正確に言えば、MWCというグローバル市場に、日本市場が近づいている、ということなのかもしれない。そのことを従来以上に強く感じさせられるMWC2015であった。

 では、具体的にどのようなトレンドがあるのか。次回は通信インフラ、その次は端末やサービスについて、それぞれ解説していきたい。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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