不動産市況が悪化の一途をたどるなか、新興不動産企業が監査法人による「監査意見不表明」によって“とどめ”を刺されるケースが続出している。新興不動産をめぐり、銀行融資に続いてにわかに厳格化する監査の背景には何があるのか。

 「審査会を通りませんでした」

 11月28日。新日本監査法人の担当者からのこの一本の電話で、中堅不動産会社、モリモトの命運は決定された。

 きっかけは、ある取引案件のキャンセルであった。信託銀行系の法人顧客向けに開発した事業用賃貸ビルが、顧客都合で10月末に売却キャンセルとなったのだ。32億円の売上代金が未入金となり、10月末までに必要な運転資金26億円が不足した。

 11月6日には、全取引金融機関を対象にミーティングを開催し、2~3月の資金借り換えについて了承の回答を得た。だが、折しも同社では、11月中旬発表予定の中間決算の監査の真っ最中だった。

 監査法人は態度を硬化させた。当初決算発表を予定していた11月14日、「今のままでは監査意見不表明とするしかない」との通告が下される。

 モリモトは決算提出を延期し、対策に迫られた。肯定的な監査評価のためには、各金融機関からの支援の確約、および今後の売り上げの確かさを高めるための提携やスポンサー探しを、中間決算提出の法定期限である11月末日までに行なう必要があった。

 後者については、子会社で、リート「ビ・ライフ投資法人」の運用会社である、モリモト・アセットマネジメントの持ち株、およびモリモトのビ・ライフ投資口持ち分を大和ハウス工業へ譲渡することをコアとした提携を急きょまとめた。月内に結論を出さなければならない、というモリモトの要請に応え、大和ハウスでは三連休明けに急きょ臨時取締役会を開催して提携を決定したほどだ。

 メインバンクのみずほ銀行は28日実行予定の融資の書面も用意した。だが、さらなる確証を求める監査法人担当者と提出締め切り28日当日の早朝まで夜を徹して協議が続けられた。